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一流大学卒のあの人はなぜ「頭が悪い」のか 優秀な人ほど愚かな決断をする

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NIKKEI STYLE

『The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ)』

「頭のよい人」が、とんでもない愚かなミスを犯してしまうのはなぜなのか。本書『The Intelligence Trap(インテリジェンス・トラップ)』(土方奈美訳)は、そんな疑問から始まる。 例えばコナン・ドイル。世界中を魅了した推理小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを生んだ著名な作家で、小説に描かれるち密なトリックに、彼の知性が反映されている。しかし実は、コナン・ドイルは心霊主義に傾倒していたそうだ。心霊現象の存在を友人から否定されても、かたくなに自分の考えを正当化し反論していた。これを著者は、「動機づけられた推論」と呼ぶ。自分の主張を強化するために「頭のよさ」を使ってしまい、違う立場の意見を受け入れなくなる「知性のワナ(トラップ)」である。

本書では、知能が高く教育を受けた人が誤った決断をしてしまう事例を取り上げながら、その原因を心理学や脳科学の知見をもとに探っている。そして、頭のよさと「合理的判断力(与えられたリソースをもとに目的達成に向けて最適で健全な判断や推論を行うこと)」とは異なることを検証していく。著者のデビッド・ロブソン氏は、人間の脳、身体、行動などを専門テーマとする科学ジャーナリストだ。

なぜ思考は狭まるのか

高度な知識と豊かな経験を有する専門家が、考えられない判断ミスをしてしまう事例も興味深い。FBI(米連邦捜査局)の科学捜査チームがおこした犯人取り違え事件では、爆発物の入っていたバッグについていた指紋が無実の人物のそれと一致していると誤認。爆破事件にまったく関係ない人物を逮捕してしまった。世界一優秀と言われるFBIの熟練の鑑定者は、なぜ間違ってしまったのか――。 著者は、指紋鑑定のプロセスに熟練した人ほど、自動処理のように、つまりぱっと指紋の特徴点を見つけ出せるようになることを指摘する。熟練鑑定者は「容疑者が自白した」という情報を知らされると、思考にバイアスがかかりやすい。自白情報がないケースに比べて指紋の一致点を見つける率が上がる、という調査結果がその裏付けだ。「専門知識があるために、凝り固まった考えや無意識の行動を取るようになる」という思考のわなを、著者は「専門知識の逆襲」と名付けている。 さまざまな知性のわなを回避するために、心理学では「根拠に基づく知恵」という新しい研究が広がっている。判断力は何によってもたらされるのかについての実証的な探究だ。その中では「対立している状況で他者の視点も考える」、「変化の可能性に気づく」といった能力が、賢明な思考力を伸ばす要素として検討されているという。知能ではなく「知恵」という言葉が使われている点が興味深い。

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