新型コロナワクチン購入を巡る、米政府の動向
米政府が12月14日から新型コロナウイルスのワクチン接種を始めた中、トランプ政権が1億回分のワクチン購入を見送っていたと米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。このワクチンはファイザー社製で、同社は1億回分を英国など海外に振り向けた。初回に出荷されたファイザー社製のワクチンは290万回分にとどまり、医療従事者に行き渡るに十分ではなかった。12月23日、米政府はようやくファイザーから追加で1億回分のワクチンを購入すると発表した。(米ポートランド=山中 緑) 米国は12月14日、新型コロナウイルスワクチンの接種を開始した。イギリス、バーレーン、カナダ、サウジアラビア、そしてメキシコに続いて6カ国目だ。 米政府は2020年7月後半、新型コロナウイルスのワクチン開発と供給について、製薬大手6社との契約を集結している。政府が開発資金を提供する見返りとして、開発に成功した場合には一定量を国内向けに確保する内容が前提だった。 しかし、ファイザー社は資金提供に伴う政府からの干渉とそのことによる開発スピードの鈍化を懸念した。その結果、ファイザー社は政府からの資金提供を受けずに自社で開発を行い、開発成功の際には契約量のワクチン提供を保証するという契約内容となった。 米国政府にとっては、成功した時にのみワクチンの購入費用を支払うという好条件である。この契約で米国政府が確保したファイザー社製ワクチンは、1億回分だ。ファイザー社は追加契約を提案したが、他5社との公平性を期するためとして受け入れられなかったという。
■NY消防署職員の過半数「ワクチン希望しない」
11月8日、ファイザー社が開発したワクチンが95%以上の有効性を確認したというニュースが世界中を巡った。それでも米政府がファイザー社からの提案を受け入れることはなく、追加購入には至らなかったとニューヨーク・タイムズは伝えている。ファイザー社は11月11日、2億回分のワクチンをEU(欧州連合)へ提供すると発表した。 米政府はパンデミック以降、早期のワクチン開発とコロナウイルスの収束を掲げてきた。しかし、米国企業であるファイザー社が開発した世界初の新型コロナウイルスワクチンは、初期の供給においてはその大部分が欧州に供給されることになった。 12月23日、米政府はようやく、ファイザー社から追加で1億回分のワクチン購入の契約を結んだと発表した。今回はさらに4億回分の追加購入を可能にする内容だ。米国内の希望者は、2021年の6月までにワクチン接種を受けられる見込みとなった。 一方で、短期間での開発による不安の声も大きい。CBNニュースは12月7日、ニューヨークの消防署職員の55%がワクチンの接種を希望しないとの調査結果を伝えている。 ワクチンへの不安を払拭するため、元大統領のバラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの3氏は、公の場でワクチン接種を行うと表明した。ジョー・バイデン次期大統領は、12月22日にテレビカメラの前でワクチン接種を受け、その様子は世界へ生中継された。ドナルド・トランプ大統領は、ワクチンの早期開発実績をアピールするものの、自身の接種については触れていない。