【年金制度改正】労働者に影響のある6つのポイント 変更前に知り損をしない
2020年6月5日にいわゆる年金制度改正法が成立し、公布されました。 趣旨としては多様な働き方を踏まえて長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためとされています。 その中で、労働者目線で影響のある法改正をご紹介いたします。 (1) パートへの被用者保険適用拡大(106万円の壁) (2) 在職中の年金受給の見直し (3) 60歳台前半の在職老齢年金制度 (4) 受給開始時期の選択肢の拡大 (5) 年金繰り上げ減額率の変更 (6) 確定拠出年金の加入要件見直し
(1) パートへの被用者保険適用拡大(106万円の壁)
パートの方の社会保険の適用については、その会社の正職員の1週間間及び1か月の所定労働時間の4分の3以上の勤務がある場合は対象となります。 前述の4分の3を下回っている場合でも下記の要件に当てはまる場合は社会保険に加入しなければなりません。 社会保険の特徴は逆選択(保険事故が起こりそうだから入る、起こらなそうだからはいらないという選択)ができません。 要件に当てはまる場合は加入しなければならない ということです。 その対象範囲が今よりも拡大される法改正を予定しています。 以下の5つの要件に当てはまる場合は社会保険の加入が必要です。 【要件1】企業規模要件(法改正) 500人超の企業 → 50人超の企業まで段階的に適用していきます(2022年10月から100人超、2024年10月から50人超) 【要件2】 労働時間要件(現状維持) 週20時間以上 【要件3】 賃金要件(現状維持) 月額8万8000円以上 【要件4】 勤務期間要件(法改正) 1年以上 → 撤廃。フルタイム勤務者と同様に2か月を超えて勤務の場合は適用 【要件5】 学生除外要件(現状維持) 学生でないこと これらの要件に全て当てはまっている場合は、社会保険に加入しなければならなくなります。 また、報道などで耳にする106万円の壁とは 8万8000円 × 12か月=105万6000円(端数処理し、106万円) 社会保険への加入義務が乗じる「106万円の壁」ということですが、被扶養者認定基準の130万円未満の要件は変更とはなりません。 106万円の壁を超えてしまい、社会保険に対象となる場合は、扶養から外れて自身で社会保険料を納める必要があるということです。 デメリットは負担増となってしまうことです。 メリットは将来受け取る年金増額や病気などにより万が一就労できなくなった場合に傷病手当金が受給できる場合があるということです。 年金増加の目安については例えば月額8万8000円で10年間パートを務めた場合、老齢厚生年金とし月額約4500円が終身に渡って受給できます。 106万円の壁は、契約締結時に適用されるか否かが決定するので、130万円の壁のように年末に収入を調整するような問題は生じないということです。 なお、8万8000円に含まれるものは基本給であり、最低賃金算出の際に含まれないような通勤手当や家族手当を含めずに8万8000円という理解です。 しかし、130万円の壁の収入要件には基本給はもちろん、通勤手当、家族手当、残業代、賞与などは全て含まれます。 それぞれの壁で収入要件の考え方が異なるので注意しましょう。