東日本大震災では“寒さ”で亡くなった方も…巨大地震が冬に発生したら「低体温症」に注意!
手島千尋アナウンサーがパーソナリティを務めるTOKYO FMの番組「防災FRONT LINE」。2月5日(土)の放送では、昨年12月に内閣府が発表した「日本海溝・千島海溝 地震被害想定」について取り上げました。
日本は地震大国です。有感地震、いわゆる人が感じる地震は1年間に1,000~2,000回、つまり1日あたり3~6回ほど地震が発生しています。また気象庁によると、日本全体で無感地震(=人が感じない地震)も含めた場合、1年間に10万~15万回の地震を観測しています。日本で暮らしている以上、地震は切っても切り離せません。 千島海溝の巨大地震は、北海道の択捉島沖から十勝地方の沖合にかけての領域で起きる地震を指します。一方、日本海溝は千島海溝の南、青森県の東方沖から千葉県の房総沖にかけての一帯です。いずれも海側の太平洋プレートが陸側に沈み込んでいて、そのプレートの境界では、過去に1952年の十勝沖地震や1973年の根室半島沖地震など、マグニチュード7クラスの津波を伴う地震が相次いで発生しています。 日本海溝沿いでマグニチュード9.1の地震が発生した場合、東北や北海道の各地で10メートルを超える巨大な津波が押し寄せるとされています。また、千島海溝沿いでマグニチュード9.3の地震が発生した場合は、北海道東部を中心に20メートルを超える津波が押し寄せると予想されています。 それによる死者の数は、北海道で8万5,000人、青森県で7,500人、宮城県で4,500人など、合わせて10万人近くにものぼり、8万4,000棟が全壊すると予想されています。 寒さが厳しい北海道や東北特有の厳しい被害想定も公表されました。それが「低体温症」です。東北大学の研究グループでは、東日本大震災でも津波から逃れたあと体が濡れたままでいたり、住宅の高い階などに避難して救助を待つあいだに、寒さが原因で亡くなったケースが報告されているそうです。 このため今回の想定では、低体温症によって死亡するリスクの高まる人を「低体温症要対処者」と位置づけて、初めて推計しました。その結果、巨大地震が冬に発生した場合、低体温症になる危険のある人は、日本海溝で4万2,000人、千島海溝で2万2,000人に達すると予測しています。 一方、防災対策を進めた場合の効果も公表されました。津波避難施設の整備など避難先の確保を進めるとともに、浸水域にいるすべての人が地震から10分ほどで避難を始めていれば、犠牲者の数をおよそ80%減らすことができると推計しています。 そこで重要なのが「波避難ビル」「津波避難タワー」の存在です。南海トラフの被害が想定される地域では整備が進んでいますが、自治体の財政的な事情から整備が進んでいないエリアも多く存在しています。 都心や関東南部に住む私たちも、住んでいるエリアではないから……ではなく、もしも私たちの街で起きたら……ということを考えながら、海沿いにお住まいの方は「津波避難ビル」「津波避難タワー」について調べて、家族で話し合ってみてください。 防災意識を高めることは、命を守ることへとつながります。 (TOKYO FM「防災FRONT LINE」2022年2月5日(土)放送より)