<女子バレー>既成概念捨て挑む非常識な新戦術「Hybrid6」とは──眞鍋監督に聞く
相手より先に25点を取れる6人で戦えばいい
──「新戦術」のコンセプトは? 眞鍋監督 シンプルですよ。バレーボールという競技は、ルール上、相手より先に25点、3セットを取ればいいスポーツですよね。ならば、点数を取れる選手がより多くコートに入っていれば勝てるということです。そこで、ミドルブロッカー2人、ウイングスパイカー2人、オポジット(=セッター対角)1人という概念を僕自身も払拭して、相手より先に25点(あるいは15点)を取ることができる6人で戦えばいいと。セッター以外の5人のアタッカーをどのような組み合わせにしたら一番効果的なのか、いろいろと考えて試しているところです。 ──日本チームの中でエース揃いの布陣なら、25点を先に取れる……。 眞鍋監督 そう。で、たとえば今までやったら、江畑(幸子)、迫田(さおり)、長岡(望悠)が1つのポジションを争っていたんです。 ──ああ、もったいないと思っていました。悩みの一つでした。 眞鍋監督 単純にその3人かどうかわかりませんが、そのウイングスパイカーの3人が、日本で一番点を取れるメンバーが同時にコートにいる、そういうことも可能になるんです。
──たしかに練習で木村(沙織)さん、迫田さん、江畑さん、長岡さんが同時にコートにいて、すごいなと思っていました。それで迫田さん、長岡さんがクイックに入ったり、長岡さんがレフトをこなすなど、ローテごとにポジションが違ったり……。つまりは固定のポジションがない、言わば、“ポジションレス”でやられるということですか。 眞鍋監督 そうです。日本選手は、もはや1人が1つのポジションでは厳しい、1人で2つ、3つやれるようにならないと勝てないと思っています。新しい発想で複合的やらないと。そう、松平さんが言われた「非常識を常識に」です。「非常識」なことをやらなければ、日本は勝てない。 たとえば、長岡は左利きだから、従来ならライト(オポジット)というポジションですが、僕も初めはそう思っていましたが、左利きだからライトの方が決まるというのは既成概念で、練習をして試合をすると、レフトの方が決まる可能性が高かったりする。 迫田という選手は、フロントからのスパイクよりもバックからの方がアタック決定率や効果率が高い。そんな選手は男女あわせて世界でもいないですよ。前からの方が当然決まりますから。でもそういう選手なら、前衛でも後ろに下がって後ろからまわって打てばいいと。「MB1」では、迫田の前衛だけど後ろから打つ攻撃に審判も混乱してミスジャッジしていましたね。前衛の選手はバックのラインを踏んでもOKなのに(笑) 小さい頃からミドルブロッカーだ、セッターだと決めてやってきていますけど、サーブレシーブをしない役割のミドルブロッカーの選手が実はサーブレシーブがうまいかもしれない。そんなこともあるかもしれません。僕はミドルブロッカーはミドル、サイドはサイドっていう既成概念を払拭して、長所をより活かせるポジションにつかせてあげたいと思っています。 全日本女子にはもう「ミドルブロッカー」というものは存在しないんです。全員スパイカーです。パスをきっちり上げる役割が「パスヒッター」、それ以外はポイントをとる「ポイントゲッター」です。そして攻撃の呼び方なども、ジェットやマッハみたいに“全日本女子オリジナル”です。