シリアの病院で発見の多数の遺体、どんな状況だったのか 反アサド政権勢力が説明
シリアの首都ダマスカスの病院で、拷問を受けた痕跡がある遺体が多数見つかったことをめぐり、詳しい情報が明らかになりつつある。 バッシャール・アル・アサド政権を倒した武装勢力は10日、ダマスカスの病院の遺体安置室で、拷問された痕跡がある約40体の遺体を発見したと発表した。 同勢力が公開した、ハラスタ病院の冷蔵室で9日に撮影されたとされる動画や写真では、血のついた白い布で覆われた遺体が積み上げられている様子がみられた。 いくつかの遺体は、顔や胴体に傷やあざがあるように見えた。番号や氏名が書かれた粘着テープも見て取れた。 シリア南部で反体制派として活動してきたグループのメンバー、モハメド・アル・ハジ氏は、「遺体安置室のドアを自分の手で開けた。おぞましい光景だった」とAFP通信に話した。 同氏によると、ハラスタ病院の職員から遺体が遺棄されているとの情報を得て、他のメンバーらと同病院に向かったという。 同氏は、「発見したことを(反政府の)軍事司令部に報告した。遺体の身元確認を家族ができるように、シリア赤新月社と連携し、遺体をダマスカスの病院に運んだ」と述べた。 遺体がどれくらいの間、安置室に保管されていたのかは不明。腐敗の程度はさまざまだったという。 ■4300人を拘束との文書 イギリスに拠点を置くNGO「シリア人権監視団(SOHR)」は、アサド政権下の刑務所で約6万人が拷問され、殺害されたとしている。 複数の人権団体によると、アサド前大統領が2011年の民主化要求運動をが弾圧して以来、シリアでは10万人以上が行方不明になっているという。 シリアのNGOは、ハラスタ病院で見つかった遺体は、ダマスカスの北にある悪名高いサイドナヤ刑務所収容されていた人々の可能性が高いとしている。 トルコに拠点を置く「サイドナヤ刑務所拘束者・行方不明者協会(ADMSP)」の共同設立者ディアブ・セリヤ氏は、「ハラスタ病院は拘束者の遺体を収容する主要センターとして機能していた」、「遺体はサイドナヤ刑務所やティシュリーン病院からそこ(ハラスタ病院)に送られ、ハラスタから集団埋葬地へと運ばれていたのだろう」とAFP通信に話した。 ADMSPは、サイドナヤ刑務所に4300人が拘束されていると書いてある、10月28日付の公式文書だというものを公開した。「白い建物」には司法関連の拘束者2817人、「赤い建物」にはテロ関連および軍事法廷関連の拘束者1483人がそれぞれいると書かれている。 ADMSPは、「この概数は、刑務所が解放された際に外に出られた拘束者数を表している」と述べた。BBCはこの情報の正確性をすぐには検証・確認できていない。 サイドナヤ刑務所をめぐっては、秘密の監房や地下室に拘束されている人がいる可能性があるとして、シリアの民間防衛隊(通称「ホワイト・ヘルメット」)が捜索を実施した。だが、そうした人は見つからないまま、10日に捜索を終えたと発表した。 民間防衛隊は、「封鎖されたままだったり、隠されたりしている区域は、施設内に見つからなかった」、「行方不明となっている何千人という人々の家族たちと深い失望を分かち合う」とした。 ADMSPは2022年の報告書で、2011年から2018年の間に、3万人以上が刑務所で処刑されたか、拷問、医療の欠如、または飢餓によって死亡したと推定されている。 また、2018年から2021年の間に少なくとも拘束者500人が処刑されたと、釈放された元収容者の証言を引用している。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、処刑はアサド政権の最高レベルで承認されていたとし、戦争犯罪や人道に対する罪に当たる行為だと非難していた。 アサド政権はアムネスティの主張を「根拠がない」として否定し、シリアでのすべての処刑は正当な手続きを経て行われていると主張していた。 バッシャール・アル=アサド大統領を失脚させた反政府勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」の指導者は、政治犯の拷問を監督した元高官たちについて、法的責任を問うと表明した。 HTSのアブ・モハメド・アル・ジョラニ代表は、元高官たちの名前を公表するほか、国外に逃亡した者については強制送還を進めていくと述べた。さらに、そうした元高官たちの所在に関する情報を提供した者には報奨金が与えられるとも付け加えた。 (英語記事 Bodies showing signs of torture found at Damascus hospital, Syria rebels say)
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