神戸・新長田の復興シンボルに鉄人28号、再開発完了…「よその子が『ただいま』と入ってくる」下町の魅力で移住者増
1995年の阪神大震災で壊滅的な被害を受けた神戸市長田区で進められてきた新長田駅南地区の復興再開発事業の完了を祝う式典が30日、開催された。地区には再開発ビルなど44棟が立ち並ぶ。街の姿は変わったが、下町の雰囲気に魅力を感じて移り住んだ人たちによって新たな活気も生まれている。(神戸総局 村越洋平、岡さくら) 【写真】「鉄人28号」の歴代のキャラクターデザイン(高松市美術館)
式典は、復興の象徴としてJR新長田駅前に建てられた「鉄人28号」のモニュメント前で開かれ、住民ら約200人が参加。震災当時の被害を伝える映像がスクリーンに映し出された。
久元喜造市長は「長く困難な事業だった。これからも新長田の活性化と、よりよい街づくりに努めていく」とあいさつした。
ゲストハウス
震災前、ケミカルシューズなどの工業地域だった駅南地区周辺はベッドタウンに様変わりした。夜間人口は震災前から約4割増えて6000人を超え、震災後に移り住んだ人も多い。
埼玉県で育った池田舞さん(40)は2023年8月、路地に面する長屋を改装し、ゲストハウス「とまりぎ」を開業した。喫茶店でのモーニングや銭湯など、下町暮らしを体験してもらうのが売りだ。「おばちゃんとおしゃべりして元気が出た」「人の温かさに触れて幸せを感じた」と評判が広がり、利用者は100組を超えた。
池田さんは8年前、神戸市出身の夫の縁で、初めて新長田の知人宅を訪れた際に驚いたという。「よその家の子が『ただいま』と入ってきて、そのまま友だちと遊んだり宿題をしたりする。こんな場所で生活したいと思いました」
その後、新長田に移り住み、長男、長女を出産。路地で子どもたちが遊び、その声を聞きつけて集まった近所の人らの世間話に花が咲く――。そんな日々を送るうち「この暮らしを多くの人に体感してほしい」とゲストハウスを始めた。
震災前の駅南地区には、木造家屋や商店が密集していたが、約8割が全半壊、焼失。再開発で店舗と住宅を組み合わせたビルが数多く建設された。