シャネルの新アーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジーとは?
ミラノのプリンス
エネルギー、動き、現代性、素材の洗練さ、そしてコンセプトと着やすさを結びつける才能。マチュー・ブレイジーがボッテガ・ヴェネタで発表したコレクションには、職人技と創造性が見事に融合し、特に同ブランドの象徴であるイントレチャートの革を活かしたデザインが光った。すぐにミラノ・ファッションウィークで最も注目されるショーとなり、彼の演出も大きな話題になった。特に、2025年春夏コレクションでは、動物がモチーフのチェア「サッコ」が飾られた楽しいシナリオが印象的で、セレブリティたちからも高い評価を受けた。ジェイコブ・エロルディやジュリアン・ムーアなど、彼のショーに足を運ぶ著名人がますます増えた。
ユニークな経歴
ケイト・モスの大ファンだった元ティーンエイジャーが、今やシャネルのアーティスティック・ディレクターに就任した。彼は、90年代に自分の青春時代を彩ったファッション界の巨星、カール・ラガーフェルドの後を継ぐことになるとは、予想していただろうか? マチュー・ブレイジーは1984年、パリで生まれ育ったが、彼の芸術的アイデンティティはベルギーで築かれた。先コロンブス期の美術の専門家である父と歴史家の母を持つ彼は、経済学の高校卒業後、しばらくの間、美術史を学ぼうと考えていた。しかし最終的には、ブリュッセルの名門ファッションスクール「ラ・カンブル」に進学し、2006年に卒業した。卒業制作では、初めて宇宙に行ったフランス人女性、クローディ・エニュレに敬意を表したコレクションを発表した。 2007年、ラフ・シモンズは彼を自らのメンズ・プレタポルテブランドに採用した。2012年には、マルタン・マルジェラ・アルティザナルのチーフデザイナーに任命され、その後4年後、フィービー・ファイロ時代のセリーヌに加わった。 2016年から2019年にかけては、ニューヨークのカルバン・クラインでラフ・シモンズと再びタッグを組み、デザインディレクターとして活躍した。その後、冒険は突然終わりを迎えた。彼はロサンゼルスに渡り、当時ファッションコレクションを手がけていたアーティストのスターリング・ルビーをサポートすることになった。
パリの新たなキング
2020年、ケリンググループはマチュー・ブレイジーをボッテガ・ヴェネタのデザインチームに迎え、2021年11月には同ブランドのアーティスティック・ディレクターとしてその舵を握った。今や、ミラノの元プリンスはパリのファッション界で新たなキングとなった。その使命は、世界的に有名なフランスのラグジュアリーブランドであるシャネルの次なる章を築くことだ。マチュー・ブレイジーは2025年4月にシャネルに加わり、初めてのコレクションを発表予定。新たな時代が幕を開ける。 text: Marion Dupuis (madame.lefigaro.fr)
translation: Hanae Yamaguchi