【毎日書評】「起業したい」と会社を辞める前に必ず踏んでおきたいステップは?
華やかに活躍する起業家の姿を目にすると、「自分もやりたい」「できるかも」と気持ちを刺激させられるかもしれません。『起業0年目の教科書』(倉林寛幸 著、かんき出版)の著者によれば、そんなときこそ「起業0年目」の始まり。 ただし、“すべてが華やかで、嫌な仕事は一切せず、ノー残業で人間関係に煩わされることもない優雅な暮らし”を夢見て「すぐに起業したい」とテンションが上がっているのであれば、ちょっと冷静になるべきでもあるようです。著者自身も、そんな妄想をしながら起業した結果、地獄のような苦しみを味わったというのです。 起業1年目にビギナーズラックで2000万円を稼げたために舞い上がっていたものの、2年目に取引先とトラブルを起こして一気にどん底へ。冷静な判断ができなくなり、高額の自己啓発セミナーや怪しい儲け話に引っかかって借金を負うなどの苦難に直面したのだとか。 いまでこそ立てなおすことができたようですが、その原因は、起業0年目になんの準備もしないまま起業したことにあったと感じているそうなのです。 起業0年目にもっと下地を整えておけば、激しいアップダウンはなく、ゆるやかに右肩上がりになる起業家人生を歩めたかもしれません。 皆さんには、ぜひこの本を読んでいただいて、私がどん底の5年間で味わった苦労と時間をショートカットしていただきたいのです。 本書のノウハウを実践すれば、大成功はしないかもしれませんが、大失敗はしないと思います。今は円安や値上げラッシュなど世の中の状況が不安定なので、大失敗しないことが何より大事ではないでしょうか。(「まえがき」より) たしかにそのとおり。起業するとなると大成功を夢見がちですが、本当に大切なのは失敗しないことなのです。そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第1章「起業したいと思ったら」に焦点を当ててみたいと思います。
起業で成功する人は、起業0年目から二足の草鞋を履いている
もしもいま、なんの準備もせずに「会社を辞めて起業しよう」と考えているのであれば、それは燃え盛る火のなかに自ら飛び込むようなもの。著者はそう表現しています。一昔前までは、そうした覚悟が必要だったのかもしれません。しかしいまはそれではリスクが大きすぎるということです。 では、どうすればいいのでしょうか? 今は時代が変わり、さまざまなツールがあります。そのツールを活かした一つの手段が副業です。 まずは会社に勤めながら、副業で「お試し起業」をしてみる。 副業で手ごたえを感じたら、退職して本格的に起業する。 この順番を守れば、起業で成功する確率がグンと上がります。 (20ページより) 著者自身も、会社員時代から副業をしていたそう。つまりはそうした経験に基づき、「どれだけ“会社をいますぐ辞めてもやっていける”という自信があったとしても、まずは二足の草鞋を履くことからスタートしたほうがいい」と主張しているのです。 なかには勢いで会社を辞め、そのあとで「どんなビジネスをするか」と考えて、最終的に成功する人もいるかもしれません。しかし、それは例外と考えるべき。うまくいかなかった結果、お金がどんどんなくなっていく生活は、メンタル面で想像以上につらいものだからです。 資金が底をつき、アルバイトをしながら食いつなぐのも珍しい話ではないようです。それでも逃げ道が残っていれば傷は浅くて済むでしょうが、退路がなかった場合、そこから社会に復帰するまでには時間がかかるもの。しかも精神的なダメージも大きいだけに、退路を断つのは最後の手段にすべきだということです。 くれぐれも、「会社が嫌だから」「人間関係がうまくいっていないから」といった理由で、勢いで辞めてしまわないように。 私自身も、それが企業の動機であっても、そこから数年間は会社員を続けました。(23ページより) いいかえれば、会社員が嫌になったなら、それは“会社のやめどき”ではなく、“企業の準備の始めどき”だということです。(20ページより)