【欧州、水素へ傾く】ジャガー・ランドローバー 水素燃料電池技術の開発促進 1年以内にテスト開始
イヴォークサイズのプロトタイプ製作か
ジャガー・ランドローバー(JLR)は、新グローバル戦略「Reimagine」の中で、燃料電池パワートレインの開発が戦略の核心となっていることを明らかにした。今後12か月以内にプロトタイプの公道テストを開始する予定としている。 【写真】バッテリーEVとの覇権争い?【市販されている水素燃料電池車3選】 (178枚) 昨年、同社は燃料電池を搭載した大型車の開発を目的に、本格的な水素発電研究計画「プロジェクト・ゼウス」を発表した。現在、水素経済の成熟化に伴い、「クリーンな燃料電池の採用が期待されている」ことから、その方針を強めている。 プロジェクト・ゼウスが成功すれば、2020年代半ばに新型レンジローバー・イヴォークが登場する頃には燃料電池技術が実用化され、将来的には大型のゼロ・エミッション車にも使用されることになるだろう。 Reimagine戦略では、ジャガーとランドローバーがそれぞれの個別のEVプラットフォームを使用し、ジャガーは2025年からEVのみに移行することになっている。しかし、2030年までに内燃機関車の販売を禁止する英国の状況を考えると、別の動力源として水素がジャガーに与えられる可能性もある。 JLRのプロダクト・エンジニアリング・チーフであるニック・ロジャースは、プロジェクト・ゼウスについて「本当に、本当に重要だ」と語った。彼によると、同社はまもなく、走行可能な水素燃料電池のコンセプトカーを発表するだろうという。 「わたし達は、環境への干渉を最小限に抑えた推進システムを探しています」とロジャース。 「水素は、当社のラインナップの中で重要な位置を占めていると考えています。わたし達は、そのための開発と投資を行っており、素晴らしいサポートも得ています」 まだ初期の段階ではあるが、最初に登場するコンセプトカーは、イヴォークサイズのSUVになる可能性が高い。
ランドローバーはEVには不向き?
同技術はJLRの大型車、特にランドローバーでの使用を中心に検討されている。レンジローバー、レンジローバー・スポーツ、レンジローバー・ヴェラールは、サイズや柔軟性の高さなどから有力候補となるだろう。 また、BEV(バッテリー駆動EV)の充電インフラが限られている地域や国では、頑丈なオフロード車が人気を博しているため、水素発電は有効な選択肢となるだろう。 ジャガーにも導入される可能性があるが、ランドローバーに比べて小型であることを考えると、バッテリー駆動に焦点を当てることになると思われる。 JLRの計画は、BMWの計画と似ている。BMWは、X5ベースのi Hydrogen Next(イヴォークと同等サイズか)を2022年に限定生産し、さらにX6とX7をベースにした大型の水素モデルも計画している。 英国をはじめとする各市場におけるICE車の新車販売禁止により、JLRは新たなゼロ・エミッション戦略を開始せざるを得なくなっている。JLRのラインナップの大半は大型で重量があるため、BEVとして再開発するのが難しい。 ロジャーズは次のように述べている。 「水素は、(当社のラインナップの)大型車には理想的なアプリケーションです。クルマが大きくなればなるほど、エネルギーの使用効率が下がるからです」