「1ドル160円台」をひた走るドル/円だが…過去2年連続で7月に勃発している「米ドルの下落」は、今年も繰り返されるのか【国際金融アナリストの考察】
2022年7月に米ドル/円が反落した要因
2022年の場合は、インフレ対策の米利上げが3月から始まり、その後本格化しました。このため、米金利の上昇に伴う日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の拡大も、7月にかけて続きました。 こういったなかで、ポジション調整の米ドル売りが広がっても、7月にかけて、米ドルの「上がり過ぎ」が継続。米ドルの「上がり過ぎ」の修正が本格化し、ポジション調整の米ドル売りが一段と広がるなかで、米ドル/円が140円手前から130円まで急落に向かったのは、米金利上昇が一服したあとからとなったと考えられます(図表5参照)。 さて、以上を踏まえ、足下の状況を見てみましょう。 CFTC統計の投機筋による円売り越しは、確認できる最新のデータで17万枚以上に拡大し、ほぼ過去最高規模に達するなど、米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」懸念が、極めて強い状況にありそうです(図表6参照)。 加えて、足下の米ドル/円の120日MAは153.4円程度なので、161円を超えると、それを5%以上も上回る計算となり、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強まりそうです。 それゆえ、「米ドル買い・円売り」「米ドル高・円安」といった2つの観点の「行き過ぎ」懸念から、記録的に大きく米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの調整は、いつ本格化してもおかしくない状況にありそうです。ということは、3年連続で7月に米ドル/円の反落が起こる可能性は、やはり注目されるのではないでしょうか。
米ドル買いポジションの「行き過ぎ」調整が始まる?
先週発表された米経済指標は、ISM(米供給管理協会)の製造業および非製造業の景気指数や雇用統計など、全般的に予想より弱い結果が目立ちました。その状況下で、年内2回の米利下げを織り込む形で、米金利の低下が広がりました。 今週は、CPI(消費者物価指数)など、米インフレ指標発表が予定されています。下記のように、今のところ、PPI(生産者物価指数)の前年比上昇率が前回より上回る予想になっていますが、これらの結果を受け、年内利下げ2回を織り込む米金利の低下の流れが、大きく変わることにならないかが、1つの注目点と考えられます。 <11日>6月CPI総合=前回3.3%、予想3.1% 同コア=前回3.4%、予想3.4% <12日>6月PPI総合=前回2.2%、予想2.3% 同コア=前回2.3%、予想2.5% そのうえで、米ドル/円としては、この間の高値、161.9円の更新の有無にも注目したいところです。高値更新となった場合は、さらなる米ドル高・円安を模索する展開が続きそうですが、高値を更新せず、いわゆる「二番天井」の可能性が高まった場合には、これまで見てきたように、極端に大きく米ドル買い・円売りに傾斜した投機筋のポジション調整が、本格化する可能性が高まってもおかしくないといえます。 以上を踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジは、158~162.5円中心で想定します。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒