コミケは本当に大丈夫? TPPの著作権侵害の非親告罪化
2次創作は「非親告罪の対象外」
この合意を受け、11月に開かれた小委員会では、「非親告罪の範囲に、コミケなどの2次創作まで入れるのは行き過ぎだというエッセンスについては概ねコンセンサスがあるのではないか」との意見が委員から出されました。その結果、「2次創作は非親告罪の対象外」との方向で進む見通しとなったのです。対象外としたのは、いまやクールジャパンの代名詞でもあるアニメ・漫画文化の発展を支える2次創作について、萎縮させない配慮をした結果です。 ただ、まだ不明確な部分が多いのも実情です。「今回の議論では、漫画・アニメを想定して2次創作を持ち出してきていると思います。しかしそもそも法律上、2次創作の概念がないのです。これをどう規定するかに注目しています(桑野弁護士)」と述べるように、2次創作という言葉だけが一人歩きしている印象があります。一般的には、既存の作品(原作)を利用して2次的に創作された作品です。具体的には、原作の登場人物(キャラクター)や世界観を利用したオリジナルストーリーの漫画や小説、リミックスやカバー曲などを指すようです。 2次創作で思い浮かべるのが同人誌ではないでしょうか。この即売会を運営するコミックマーケット準備会は小委員会に意見書を提出し、2次創作の非親告罪への懸念を表明していました。主な内容は「2次創作が日本にだけ存在し、漫画・アニメ・ゲームにおいて、多様なクリエイターや作品を生み出す源のひとつである」ことや「現在の自由な表現活動を許容する社会状況を維持できる著作権のシステムが構築されることが、日本の表現文化全体に有益と考える」としています。これらの意見に配慮し、2次創作を非親告罪から外す方向で進められているようです。
そもそも非親告罪化でもあまり変わらない?
桑野弁護士は「大前提として、2次創作が非親告罪化されてもそんなに心配しなくても大丈夫です」と指摘します。仮に非親告罪となっても、警察などは権利者に「コミケでこんなものが売られていますがどうですか?」という意向確認を行うからです。そしてその意向が重要視されています。権利者が「刑務所送りにしてほしいとは思いません。ほっといてもいいです」という反応であれば、その事案が裁判にかけられる可能性は事実上まずないのです。 「現状の刑事訴訟の手続きを見ていると、裁判にかけられる可能性が事実上ないものについて、あえて逮捕とか捜索差し押さえのような強制処分までやるかというところが疑問です(桑野弁護士)」と述べ、いままで漫画家たちが黙認している2次創作の分野は、非親告罪化されたからといって、「権利者が処罰を求めない」となれば、大きな事件に発展する可能性は少ないのです。