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エヴァのプロデューサー不在が幸い! 社員4人の世界最小レコード会社を創業、キングと契約したバンナムアーツ副社長

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NIKKEI STYLE

《連載》仕事人秘録 バンダイナムコアーツ 副社長 井上俊次氏(15)

市場規模が膨らんだ「アニメソング(アニソン)」ビジネスの立役者の一人がバンダイナムコアーツの井上俊次副社長です。1970年代にロックバンド「レイジー」で一世を風靡しました。井上氏の「仕事人秘録」の第15回では、自己資金でレコード会社を立ち上げた当時を振り返ります。 【写真でふりかえる】レイジーのあゆみ

1999年、アニメ音楽を中心としたレコード会社を創業する。

当時は株式会社設立に資本金1000万円が必要でした。貯金だけでは足らず、生命保険も解約してかき集めました。社名には「マジックガーデン」や「ソリッドボックス」などいろいろな案がありました。悩んだ末、かつて新レーベル設立時に漫画「サイレントメビウス」の麻宮騎亜先生に名付けていただいた「ランティス」に決めました。 楽曲制作は創業メンバーでできますが、課題はディストリビューション(販売)でした。そこで、流通網を持つ販売パートナーを探してユニバーサルミュージックさんなど大手から順番に回りました。設立間もないランティスと契約を結んでくれるわけもなく、ことごとく断られました。 訪問先がなくなり、最後はキングレコードさんでした。アニメ関連のレーベル「スターチャイルド」があり無理は承知でしたが、年間売上高が2億円の事業計画を信頼して契約を決めてくれました。責任者は重松英俊さん。80年代にネバーランドのディレクターでお世話になり、当時は役員に昇進されていました。 運も味方しました。キングレコードには「新世紀エヴァンゲリオン」のプロデューサーも務めた実力者の大月俊倫さんが、当時はちょうど社外にいらっしゃった時期。後に大月さんが戻られると「こんな話は聞いてない!」と怒られたそうです。重松さんの昇進と大月さんの不在。この2つが幸運のポイントでした。

創業当初のランティスは「社員4人の世界最小のレコード会社」だった。

恵比寿にマンションの一室を借りてスタートしました。家賃は月約35万円。信用がないから、リース会社も椅子や机を貸してくれません。 カーペットの上に自宅から持ってきた電話機、後は小さいコピー機が1台だけ。キングレコードの方があいさつにいらっしゃるとなると大慌てです。「会社が混み合ってまして」とうそをついて近所の「ホテルエクセレント恵比寿」のカフェで打ち合わせしました。 ランティス最初の作品は高校時代からの親友である影山ヒロノブ氏のCDだった。 彼の楽曲をアコースティックバージョンに編曲して、ぼくも何曲かピアノを弾きました。アコースティックにしたのは、レコーディングにお金がかからないからです。ジャケット撮影も、スタジオの隅っこで済ませました。 印刷所から届いたライナーノートを見て驚きました。「KAGEYAMA H“O”RONOBU」と誤植。「うそやろ」。絶句しました。今なら刷り直しですが、当時はお金がありません。「HIRONOBU」のシールを作り、みんなで一枚一枚貼りました。4000枚くらい貼ったでしょうか。景山(影山ヒロノブ)くんには申し訳ないことをしましたが、本人は「おもしろいことするなー」と笑っていました。 [日経産業新聞 2018年8月8日付]

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