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今だからこそ気を付けたい「健康情報の押し売り」現象

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ハーパーズ バザー・オンライン

例えば会社のランチタイムや友人とのディナー、ヨガ教室などでよく聞く「これを食べたらいい」「こんなサプリがある」といった会話。単なる情報交換ならいいが、無責任な押し売りは要注意。 【写真】驚異の50歳! ジェニファー・ロペスから盗むべき39の健康習慣

「ヒトの脳はだまされやすい」

 新型コロナウイルスのニュースで持ち切りの世界情勢。インターネットで流れる情報も何を信じたらいいか、何がデマなのかわからなくなっている人も多いだろう。 「そもそもヒトの脳はだまされやすい。誰しも、情報を読み解く際に“バイアス”の影響を受ける可能性があるんです」と言うのは、健康情報やヘルスリテラシーに詳しい島根大学医学部附属病院臨床研究センターの大野智教授だ。“バイアス”とは、考え方や意見に偏りを生じさせるもので、先入観や偏見と言い換えることもできる。 「人の脳がバイアスに陥るきっかけにはさまざまなものがあります。代表的なもののひとつが“心理効果”です。健康食品などの広告を見るとよくわかるのですが、経験談や体験談が多いですよね。商品の具体的な効能に触れていなくても、誰かが“○○を使ったら体が軽くなった”と言うとなんだかよさそうに思ってしまう。これを心理学用語で“ウィンザー効果”と言います。直接的に効果を示されるよりも、第三者から間接的に効果を伝えられたほうが、すごいものと感じる心理が働くのです」  ウィンザー効果という名称は、作家アーリーン・ロマネスのミステリー小説の登場人物、ウィンザー伯爵夫人の「第三者の褒め言葉がどんな時も一番効果がある」というせりふに由来するという。 「また、権威に対して服従しがちな心理もよく使われています。例えば“名門大学の○○教授が勧めている”とか“医学博士推奨”と明記されていると、信頼性が高いものに感じがちです」  そのほかにも「○○が大注目」のように、流行しているものを好意的に受け取ってしまう“バンドワゴン効果”という心理も作用するという。

人は不安な状況にあると、不確実な情報でも信じてしまう

「心理効果に加えて“感情”の影響も無視できません。今回のウイルスのように、目に見えないものが相手だったり、誰もが感染するリスクがあったり、さらに死亡者もいるとなると、誰もが不安に襲われると思います。人は不安な状況では、不確実な情報でもそれを信じ行動に移してしまう“リスクテイカー”になりやすいことが行動経済学の研究から明らかになっています」  さらに厄介なのが、困っている人がいたら助けてあげたいという「善意」だ。ところが自分自身がバイアスに陥り、不確実な情報だと認識できていないまま、“◯◯が新型コロナウイルスに効くらしい”と周りに伝えてしまう可能性がある。この“健康情報の伝達”はさらに今、デマの拡散以外にも問題視されている点がある。健康情報を押し売りするという危険性だ。大野先生が長く携わっていたがんの緩和医療現場でよく経験したのが、この“健康情報の善意の押し売り現象”だという。 「身近な人が病気になると、どうにかしたいとさまざまな健康情報を患者さんに伝えようとします。善意の気持ちで“○○病院に名医がいる”“この健康食品はがんに効く”という情報を伝えてしまう。でも患者さんからは、“代替療法を勧められて困った”“いろんな健康食品を送られて断れない”といった声をよく聞きます。自分は善意と思っても、その情報は病気を患っている本人にとって実は不要なものであったり、迷惑であることは少なくありません。しかも、その情報は患者が受けている治療の邪魔になることもあります」

よかれと思ってやっていること、実は自己満足?

「もしもここまで読んで“よかれと思ってやっているのにダメだなんて”と、残念な気持ちになったりムッとした人は、本当に患者自身の気持ちになっていない可能性があります。ちょっときつい言い方ですが、善意と言いつつも自己承認欲求、自己満足で行っている可能性があるからです。健康情報は人それぞれ求めるものが異なります。また、何が正しいかを厳密に評価するのは、専門家でも難しいものです。安易に不確実な健康情報のやり取りをしないことは、とても大切なことなのです。こんな時期だからこそ、そういう視点にも目を向けてほしいと思います」

Text: Manabi Ito From Harper's BAZAAR June 2020

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