なぜ、今さら曙、サップに魔裟斗? 大晦日イベントは迷走か。
ただ、29日、31日と2日に渡って格闘技の“聖地”さいたまスーパーアリーナーで興行を打つライジンには、昔の名前に頼るカードだけでなく、魅力的なカードも組まれている。元女子レスリング世界王者、山本美憂の長男で、レスリングで五輪出場を狙っている山本アーセン(19)が総合に初参戦して、あのヒクソン・グレイシーの二男・クロン・グレイシー(27)と対戦。また世界のトップを走る総合格闘団体UFCも、注目しているヒョードルの復帰戦、1m88で93kgの体格で世界最強女柔術家と呼ばれるギャビ・ガルシア(ブラジル)もレスラーを相手に総合デビューするなど、柔道の元北京五輪金メダリストの石井彗が参戦するヘビー級トーナメントも含めて、注目のマッチメイクもある。 谷川氏も、「勝負論では、気になるのは、体重差があると言えど桜庭対青木ですね。寝技勝負になるのか、打撃になるのかわからない。また魔裟斗の試合も、一人の父親としてどういう姿を見せてくれるのかという点で注目しています」と言う。 確かにテレビ局の視聴率優先主義で組まれたと考えられるカードには、賛否両論あるだろう。UFCに圧倒され、新たなスターも不在で停滞気味だった日本の格闘界の再興の起爆剤になるかどうかもわからない。だが、喧々諤々の議論を起こし始め、テレビの地上波を巻き込み、再びインパクトを与えようとしていることには大きな意義があると思う。そういう賛否が、ネットやSNSを通じて議論として沸騰し始めれば、底辺から再ブームが生まれることにつながるかもしれない。 「格闘技の歴史は、大きな波を繰り返しているんですよね。沢村忠さんのキックボクシングや空手バカ一代の極真空手の大ブームがあって、その後、後楽園ホールでのキックの興行に、100人ほどしか人の集まらない時代を経て、再びK-1、プライドといううねりがありました。ハッキリ言って自爆してしまいましたが、あのままテレビ放映を維持できていれば、今の格闘界の流れも変わっていたでしょう。また、いつ大きなうねりが訪れてもおかしくない。そういう可能性を格闘技は秘めています」と、谷川氏。 先の読めないのがまた格闘技の魅力。はてさて大晦日の格闘イベントの結末や如何に。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)