考察『光る君へ』28話「いつも、いつも」と笑い合うのは、道隆(井浦新)在りし日々、華やかな思い出…清少納言は『枕草子』で定子の尊厳を守った
行成の誠実さ
明けて長保2年。西暦ちょうど1000年。彰子立后に向けて道長が動き出す……が、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が先んじて動いていた。 「藤壺の女御様(彰子)中宮ご立后の日は2月25日」「先に占っておきました」 これらを日記に書いて(あっ。いかん)と墨で消した跡は、国宝『御堂関白記』にそのまま残っている。こうした部分を再現するあたり、NHK大河ドラマならではのこだわりを感じて、とても好きだ。 そして、改めて行成が彰子立后について「中宮・定子が出家して以来、大原野社の神事をする后がいないので、彰子を中宮にして神事を行うべき」と帝を説得、奏上したということは『権記』にある。 渡辺大知の演技は、この説得が道長に息子の代まで立身出世を約束されたから……というのではなく、これ以上の国の乱れはなんとしても食い止めたいと願うからという、行成の人間としての誠実さを感じさせるものだった。
これが年の功?
豊前(現在の大分県)の宇佐八幡宮から帰った宣孝と、まひろの娘の対面。そして命名「賢子(かたこ)」 「父上だぞ」「まひろの機嫌のよいときの顔に似ておる」「まひろの子ゆえ賢いことに間違いはない」 自分とは血がつながっていないなど全く感じさせない、父としての優しい言葉。赤子が似ているのはまひろとだけ。そして、実の父である道長にも、 「先日(まひろに)子が生まれまして」「初めてのおなごでございますゆえ、可愛くてなりませぬ(生まれたのは娘でした。可愛がって大切に育てます)」 という報告まで。行き届きすぎている……これが人生経験、年の功というやつかと震える思いだ。宣孝が帰ったあと、かなり時間が経ってから (……ん?)と気づいたらしい道長、頼む! 気づいて! あなたの子、石山寺ベビーです!
定子の切ない願い
彰子が立后の儀式のため内裏をいったん退出した翌日、定子と親王・内親王が内裏に呼ばれる。ひさしぶりのコソコソ噂話・内裏勤務女房さんたち! 「どういうおつもりで」「最低」「どのツラ下げて。恥知らず!」 仮にも中宮が、すごい言われよう。前々から心配しているが、まひろがこの女房たちと渡り合えるのか……? 清少納言は画鋲をまかれたりのいやがらせを受けても、中宮様さえ居てくだされば全然平気! といなしていたが。まひろは一体、なにを支えにここでやっていくのだろう。 彰子立后を詫びる帝に、そもそも自分も彰子も、家のために入内した身なのだと告げる定子。心から慈しみ愛されている后でも、そうではない女御たちも、スタート地点で背負わされているもの、立場は同じなのだ。 「彰子さまとご一緒の時は彰子さまのことだけお考えくださいませ。見えているものだけが全てではございません。彰子さまとご一緒のときは私のことはお考えになりませぬよう」 帝の立場と心を守るために。聡明な后、定子の切ない願いだった。