40代以上の女性、8人にひとりが悩んでいる!?排尿の不調が現れる病気「過活動膀胱」とは?
「以前よりもトイレが近くなった。特に台所に立って、水の音を聞くと尿意を催し、我慢できなくなる…」、その悩みに「考えられる病気はいくつかありますが、過活動膀胱という病気の可能性があります。泌尿器科の医師に相談を!」と答えてくれたのは、女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長 中村綾子さんだ。過活動膀胱について詳しく聞いた。
過活動膀胱とは?
最近、急に排尿の回数が増えた、我慢できないような尿意が突然起こる…そんな症状に悩まされている女性は少なくない。何らかの原因で膀胱のコントロールがうまくいかず、排尿のトラブルが起こる「過活動膀胱」かもしれない。40歳以上の女性のおよそ8人に1人が症状をもつというデータもあり、特に50歳以上に多く見られる。 そのおもな症状は、1. 我慢できないような強い尿意が突然起こる「尿意切迫感」、2. 尿意とともに、思わず尿をもらしてしまう「切迫性尿失禁」、3. 日中の排尿回数が多い(目安は1日8回以上)「昼間頻尿(ちゅうかんひんにょう)」、4. 夜の就寝時に尿意を感じて、睡眠中に一回以上トイレに起きる「夜間頻尿」だ。 症状には個人差が大きく、排尿回数が増えた程度の人もいれば、我慢できずに尿失禁を起こすケースも。もれる量も小さじ1杯くらいから、多い場合は一度に100ccも、もれることも。 こうなるとQOL(生活の質)がぐっと落ちてしまう。よく聞く訴えは、仕事や家事に集中できない、友人との外出や旅行が楽しめない、人前に出るのがおっくうになる、夜眠れず昼間眠い、などだ。 原因としては加齢、肥満、生活習慣病、骨盤底筋の緩みなどが考えられ、放っておいて自然に治るものではなく、どんどん症状が進行していく。 特に女性の場合は「恥ずかしい」と受診を躊躇しがちだが、我慢せずに早い段階で泌尿器科の医師に相談するのがいいだろう。
どんな治療をするの?
医療機関を受診すると、問診をはじめ、尿検査、腹部エコー、内診などで診断する。間違えられやすい病気に、膀胱炎、膀胱がん、尿路結石、心因性頻尿、薬剤の副作用などがある。 治療は、膀胱の異常な収縮を抑える薬や、膀胱の容量を増やす薬に加え、生活習慣の改善、排尿に関係する骨盤底筋を鍛える運動などの「行動療法」が併用されるのが一般的。 薬で改善しない場合には「ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法」を行うことも。これはボツリヌストキシンという天然のタンパク質を有効成分とする注射薬を膀胱内に直接注射して、膀胱の異常な収縮を抑えるもの。世界90カ国以上で認可されており、日本でも20年4月から保険適用になった。 「患者さん自身も、排尿量を増やすカフェインやビタミンC、辛いものなどの刺激物の摂取を控え、体を冷やさないこと、禁煙、肥満の解消を心がけることが大切です」と中村先生。 ◆自分で行う対策 ・排尿を我慢する訓練や、排尿に関係する骨盤底筋を鍛えるトレーニング。 ・尿量を増やすカフェイン、ビタミンCや刺激物の摂取を控える。 ◆病院で行う治療法 ・薬物療法、行動療法、ボツリヌス療法、電気刺激療法、磁気刺激療法など。 ゆらぎやすい40~50代女性の体。何ごとも恥ずかしがらず医師に相談し、生活の質を上げていこう。 教えてくれたのは 中村綾子さん 女性医療クリニックLUNAネクストステージ 院長。日本泌尿器科学会専門医、キレーション治療認定医。女性にとっては受診しにくい、泌尿器科の不調に寄り添う治療に定評がある イラスト/macco 取材・原文/山村浩子