DOWAHDが小坂製錬の不純物対応力強化。リサイクル原料を増処理、試験設備導入し技術開発
DOWAホールディングスは、中核事業所である小坂製錬(秋田県)のTSL炉の不純物対応能力を強化し、リサイクル原料の増処理に取り組む。リサイクル原料増処理に向けた試験設備を2022年度に導入して試験・開発を進めるなどして、リサイクル原料への対応力で強みを持つTSL炉の競争力に磨きをかける。また、Eスクラップなどのリサイクル原料中に含まれる錫やアンチモンなどの不純物の増処理・実収率向上に向けた技術開発なども行う。 背景にあるのはリサイクル原料に含まれる金などの金属量が減少傾向にあることだ。金属含有量が少ないリサイクル原料を同量処理しても金属回収量は減少してしまうため、金属を同量以上回収するには増処理が必要となる。だが、TSL炉では秋田製錬(秋田県)から送られてくる亜鉛残渣も原料としており、単純にリサイクル原料を増やすと亜鉛残渣の処理に影響が出てしまう。このため、小坂製錬でリサイクル原料増処理のための設備投資や技術開発を実施していく。 小坂製錬では、炉の燃焼促進を図る酸素富化設備の設置や、炉に酸素や燃料を吹き込むランスの交換頻度を減らして稼働率を向上するための技術開発などを進める。リサイクル原料中に含まれる金属回収では、錫やアンチモンといった不純物の処理能力も向上させてリサイクル原料の増処理に対応可能な体制を構築する。 また、リサイクル原料の破砕・選別といった前処理機能を担う環境・リサイクル部門と製錬部門が連携し、より多くの種類のリサイクル原料に対応可能な体制を目指すとともに、前処理による減容化でTSL炉の処理能力を最大限に活用し、金属回収量の増加を図る。リサイクル原料の前処理は炉に投入する原料の減容化・高品位化と同時に、処理時のエネルギー効率の改善などの効果が期待できる。また、前処理で除いた鉄やアルミ、プラスチックはマテリアルリサイクルに回し、資源循環型社会の形成にも貢献する。 同社は、今期から3カ年の中期経営計画において、「循環型ビジネスモデルの進化」による機会獲得を基本戦略の一つに掲げており、金属リサイクルの強化施策に注力する。使用済み自動車排ガス浄化触媒からの白金族金属(PGM)回収やEスクラップなどリサイクル原料からの多様な金属回収を強化し、リサイクル原料由来の金属比率(売上高ベース)を21年度の55%から24年度には70%まで引き上げる計画だ。