松本幸四郎 × 尾上松也、最強タッグで挑む“歌舞伎NEXT”
ユーモアたっぷりに答えつつも、そのプレッシャーは伝わってくる。ふたりは、歌舞伎で共演したことはもちろんあるが、劇団☆新感線で主演を務めたという共通点もある。劇団☆新感線の作品にはどのような魅力があるのだろうか。 「いのうえさんの演出は"それができたら格好いいし、お客さまが驚くだろう" と想像はできますが、とてつもなく大変なことが求められます。でも理屈にはかなっているから、それを演るしかない、というところに魅力があります(笑)」と幸四郎。 一方で松也は「僕は『メタルマクベス』に出演しましたので脚本は宮藤官九郎さんでしたが、いのうえさんが体現したいと考えている楽しさや面白さは刺激的で共感できるものばかりです。いのうえさんご自身の中に歌舞伎の要素をどこかしらに備えていらっしゃるので、歌舞伎に携わっている僕自身もワクワクしますし、純粋にうれしいです」と語った。 ひと回り年が離れているふたりは、これまでの共演でどんなことが印象として残っているのだろうか。 「1992年に僕が初めて香川県の金丸座に行ったときに、共演はしていませんが、松也くんと一緒に(中村)時蔵(現・萬壽)さんのファミコンで遊んだことを覚えています。時蔵さんが所有者だから、強かった(笑)。僕たちは負けてしまって、彼が大泣きしたのを覚えています」と幸四郎。 松也は「僕も金丸座に行くのはそのときが初めてでしたが、まだ10歳にもなっていなくて、確かに悔しがって号泣していましたね(笑)。金丸座のこんぴら歌舞伎には2014年のときも幸四郎さんとご一緒させていただいて、僕は『車引』の桜丸や『寺子屋』の源蔵を勤めさせていただきました。若手だけで金丸座の幕を開けることや通し狂言に出させていただく機会は珍しいことでしたので、僕にとって忘れられない公演の一つです。そのときに幸四郎さんから"歌舞伎NEXT" をなさると伺って、僕もいつか出させていただきたいと思いました」と続けた。 まったくタイプの違うふたりはどんな世界観を描くのだろうか。 「僕が演じるライは、これまで見てきたものとは、また違うライになると思っています。それよりもライバルである幸四郎さんのライを同じ舞台上で、生で見させていただけるのは、とても楽しみです。僕の脳裡に残っている初演時の名台詞や名場面が舞台で再現されるのを、ファン的な目線で見られることにも期待しています」。 そう語る松也の言葉を聞きつつ、幸四郎自身も第二弾への思いを語った。 「歌舞伎NEXTが『阿弖流為』で第一歩を踏み出し、それがあるからこそ、次がある。僕からすると、今はまだ、何かが"生まれた" というよりも"始まった" という感じです。混ぜ合わせることで、この世にないものを生み出す。それを目指して、挑みます」。 その成果を見るのが待ち遠しい。 松本幸四郎(まつもと・こうしろう) 1973年、東京都生まれ。父は二代目松本白鸚、息子は八代目市川染五郎。屋号は高麗屋。2018年1 月、歌舞伎座 高麗屋三代襲名披露公演『壽 初春大歌舞伎』で十代目松本幸四郎を襲名。古典から復活狂言、新作歌舞伎まで幅広い演目に取り組む一方で、劇団☆新感線の舞台や映像作品にも出演し人気を博す。 尾上松也(おのえ・まつや) 1985年、東京都生まれ。父は六代目尾上松助。屋号は音羽屋。近年は『魚屋宗五郎』の魚屋宗五郎、『東海道四谷怪談』の民谷伊右衛門など、古典作品の大役に挑んだ。ミュージカル『エリザベート』のルキーニ役など歌舞伎以外の演劇や映像作品でも活躍している。『メタルマクベス disk2』で劇団☆新感線の舞台にも出演。 HAIR & MAKEUP BY TOMOYO TSURUSAKI(FOR KOUSHIRO), YASUNORI OKADA(FOR MATSUYA) ■歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』 2024年11月30日~12月26日 新橋演舞場 チケットホン松竹 TEL. 0570-000-489 2025年2 月4 日~25日 博多座 博多座電話予約センター TEL. 092(263)5555 BY SHION YAMASHITA STYLED BY ATSUSHI KIMURA