消えた街のシンボルもオマージュに次の時代へ…テレビ塔のホテルで客迎える壁画 地元美術家の想いと願い
描くのは、去年、鷲尾さんがタイのイベントで描いた作品の続編。6月頃からアイデアを練り始めました。ところが…。
鷲尾さん: 「テレビ塔のタワーのデザインがいまいちしっくりこない…。びっくりするというか、圧倒的であるべきというか、ロマンチックで詩的というか、今はぐるぐるしている状態」
テレビ塔をどう自分らしく描くのか…。何度も描いては見るものの、ピンときません。
鷲尾さん: 「壁の素材の表情をそのまま残したいという希望があって、普段はいったん白でベタで塗っちゃうんだけど」
白で塗りつぶせない分、一発勝負。そこでプロジェクターでデザイン画を壁に映し、それをもとに、チョークで下描きすることに。鷲尾さん、初の試みです。
やり直しが効かない分、まずは慣れることが重要。時間を掛けながら壁と向き合います。 結局下描きだけで3日間。しかしまだ、タワーのデザインは決まりません。それでも、制作期間が限られているため、筆入れを始めます。
一筆たりとも失敗できない…自ずと指先に力が入ります。連日の真夏日の中、黙々と作業を進めます。
壁と向き合うこと10日目。再びデザイン画を壁に映し、下描きを始めました。ついにタワーのデザインが決まりました。
曲線の多い絵の中央に直線が引かれ、タワーが姿を現しました。上の部分には大きな手も。
これは、タイで描いた作品に登場するポケットに手を入れている女性の手。
続編となる壁画には、そのポケットからテレビ塔を取り出そうとする様子を描きました。
鷲尾さん: 「ここどうしようかなと悩む。僕の場合は考えるのも時間がかかるし、次から次に新しい絵が出てくるタイプでもないから。ひとつのものをじっくり育てていくっていうタイプ」
象徴であるタワーも加わり、作業は中盤へ。この頃には壁にも慣れ、筆運びも大胆に。フリーハンドであっと言う間に花を描きました。