駒澤大の大八木監督が箱根逆転優勝の要因を分析。ピタリとハマった狙い
今年の箱根駅伝で駒澤大は、目標を3位以内としていたものの、10区で創価大との3分19秒差を逆転して13年ぶり7回目の総合優勝を果たした。 駒澤大は、昨年11月の全日本大学駅伝も6年ぶりに制している。チームとしては、エースの田澤廉(2年)を筆頭に、1年生と2年生に勢いがあり、谷間の世代とも呼ばれる3年生は、起用されてこなかった。これまでも現3年生は、前回の箱根10区(区間7位)を走った石川拓慎以外、3大駅伝の経験がなかった。 しかし、大八木弘明監督は、全日本後にこんなことを考えていた。 「全日本は田澤をアンカーにして、4年の小林歩と1年エースの鈴木芽吹のどちらかを17.6kmの7区に起用し、外れた方を真ん中の区間に持っていけば優勝できると考えていたんです。結果的にはその通りになりましたが、つなぎの6区は、石川と山野力(2年)のどちらを使うか迷い、5000mの結果がよかった山野を使い、石川は箱根に取っておくことにしました。それを決めた時に、3年間コツコツとスタミナを積み上げてきた、石川以外の3年生も箱根で使いたいなと思ったんです」 1区の候補は、全日本1区を走った加藤淳(4年)と白鳥哲汰(1年)だったが、ともに15km以降に不安があった。序盤からハイペースになる展開であればファーストチョイスは加藤。大八木監督は2年連続1区だった早稲田大の中谷雄飛(3年)がいないだろう1区は、スローペースになる確率が高いと読んで、最後の状態のよさから白鳥を1区走者に決めた。 田澤の2区起用は、苦肉の策だった。じつは田澤は、12月4日の日本選手権1万mでは、27分46秒09で8位になったあとに腰と背中の張りがひどく、1週間かかって状態を戻したものの、疲労が残っていた。
それでも、1区がスローペースで数十秒差の勝負になれば2区は集団走になる。彼の力があれば、そこで2、3番手には上げてくれるはずと大八木監督は考えた。そこで、3区には区間賞も狙えるほど絶好調の小林を置き、先頭争いに加わる構想だった。 「1区はやっぱり、15km以降の不安が出てしまった。できれば30秒差でつなぎたかったのですが、47秒差だったので田澤も8位までしか上げられなかった。でも、3区の小林がいいペースで突っ込んで、3位まで上げる走りをしてくれたのは大きかったですね。4区の酒井亮太(2年)は区間11位でしたが、2位に上げることもできました。創価大が(4区で)トップに立ったのは驚きましたが、メンバーを見て4区、5区に強い選手が配置されていて、そのまま逃げ切られるだろうと思っていました」 駒澤大は、5区の鈴木が東洋大に28秒差の位置でスタートしたことが幸いした。「鈴木は初めての5区でなかなかリズムをつかめていなかった」と大八木監督は振り返るが、東洋大の宮下隼人(3年/前回5区で区間賞)が追いついて鈴木の前に出たことで、鈴木は宮下のリズムについていく走りができた。この経験は来年に向けても重要であり、最後に離されながらも下りではタイム差を詰める走りができたことは収穫だった。 往路のトップの結果は、創価大と2分21秒差、2位東洋大とは7秒差の3位。総合3位狙いから優勝が見えた瞬間だった。大八木監督は、こう振り返る。 「青学大と東海大がミスをして、うちの後ろだったのは助かりました。層の厚さが全然違うから、両校が前にいたら『復路はうちより強いだろうな』と思ってしまう。でも創価大と東洋大だったから、何とかなるかもしれないと思いました」 翌日の復路は大八木監督が考えていた、「3区間で3年生起用」がピタリとハマった。6区の花崎悠紀(3年)には58分台中盤の走りを期待していたが、それを上回る区間賞獲得の57分36秒で走り切り、創価大との差を1分13秒に詰めた。大八木監督は「これなら8区くらいで捕まえられるかな」と思ったという。