「光る君へ」大河ドラマ効果は石山寺だけ? 前回大河時より3倍超の予算、情報発信強化したけれども
大津市の石山寺が、ゆかりの紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」の効果に沸いている。同寺境内に設置された大河ドラマ館は累計来館者数が20万人を突破し、好調ぶりが目立つ。ドラマが終了する年末が近づく中、高まった石山寺の知名度を周辺への経済効果に今後どう生かしていくか知恵が求められている。 【写真】紅葉の時期にライトアップされた石山寺 色づいた紅葉を見上げて参拝者が笑顔で写真を撮る中、同寺大河ドラマ館は11月14日、20万人目の来館者を迎え、記念セレモニーが開催された。「大河ドラマのストーリーが進むごとに、石山寺にも思いをはせてくれる人が増えていった」と同寺座主の鷲尾龍華さんは1年を振り返った。 大津が大河ドラマの主な舞台の一つとなるのは、坂本城を築いた戦国武将・明智光秀の生涯を描いた2020年の「麒麟(きりん)がくる」以来。当時も観光誘客に期待が寄せられたが、新型コロナウイルスの感染拡大とも重なり、経済効果は十分ではなかった。 この経験を受け、市や観光事業者などでつくる「市大河ドラマ『光る君へ』活用推進協議会」は、「麒麟がくる」時の協議会より約3・7倍多い予算を確保し、広告などの情報発信に力を入れる。 取り組みの強化が実り、石山寺は今年、10月末までで例年の2~3倍の参拝者が訪れた。境内の土産物店「紫」では、大河ドラマ関連商品の売り上げが約8千万円に達している。運営する石山観光協会の寺島正和副会長は「源氏物語の要約本『源氏小鏡』は1冊1800円と高単価だが、10月だけで170冊売れた」と驚く。 ただ、観光客の周遊効果は十分とは言えない。石山寺や三井寺(園城寺)、市歴史博物館など市内11カ所を周遊するデジタルスタンプラリーは、8月末までに約1890人が参加したが、2カ所以上の施設を訪れた人は約半分にとどまった。 前年と同じ時期に比べて三井寺の参拝者は約1・2倍、市歴史博物館の来館者は常設展のみで約2・5倍に増えたものの、ドラマ館の20万人には遠く及ばないという。周遊をさらに促進しようと、同協議会は10月、石山寺入山券と大河ドラマ館入館券に京阪電車石山坂本線の1日乗り放題券と三井寺特別拝観券を含んだ周遊チケット(1200円)の販売を始めた。 湖上観光も苦戦した。琵琶湖や瀬田川を船で周遊する「瀬田川・琵琶湖リバークルーズ」を運航する杢兵衛造船所(大津市)によると、乗船者は10月末時点で昨年よりやや少ない約2800人という。担当者は「告知が不足していたのかもしれないが、大河ドラマの恩恵はあまりなかった」と肩を落とす。 ドラマには描かれなかったが、紫式部は船で石山寺に訪れたとされる。同社の担当者は「必要なのはどうしても船に乗りたいと思ってもらえる動機付けだ。船だからこそ紫式部と同じように湖上の風景を見ることができる」と話し「大河ドラマで得た知名度を生かし、滋賀に来た実感が得られる特別な体験だと周知していきたい」と今後に向けて意気込む。