新型コロナ「反ワクチン報道」にある根深いメディアの問題
世論の反発にそれぞれ反ワクチン記事を削除
佐々木)これには医療業界の人が猛反発をして、みんなすごく怒っているのです。その背景には、子宮頸がんワクチン、HPVワクチンですね。これに対して2010年代前半に朝日新聞が「副反応で人が死んでいる」というようなキャンペーンをやった結果、厚生労働省が接種勧奨、要するに接種をおすすめするのをやめてしまって、結果的に日本だけが子宮頸がんで死ぬ人が年間何千人もいるということになってしまったのです。その強い反省があるから、「今回は反ワクチンにならないようにしよう」とみんなが言っていたのに、朝日新聞のAERAがまた同じことをやり始めたということで、みんなすごく怒っています。結果的にAERAは見出しを差し替えました。 飯田)「見出しがネガティブに見られるとは思わなかった」という編集者のツイートがありましたが、「思わなかったのかい!」という。 佐々木)「~ワクチンすぐ接種3割」とあったものを、 『医師1726人の本音 コロナ「夏までに収束」1割未満、ワクチン「接種」「種類により接種」は6割』 ~『AERA.dot』2021年1月21日配信記事 より 佐々木)……に変えています。元のデータはそうなのです。自分よりも先に打って欲しい、「重症者の人や高齢者の人を優先して欲しい」と言っている人が3割くらい。そして「自分がすぐ接種したい」人が3割なので、合わせると6割と。それを当初の見出しでは、わざわざ「ワクチンを接種したい人は3割しかいない」という見出しにしていたということです。毎日新聞は掲載したオリコンニュースの記事を(毎日新聞WEBサイトから)削除し、ツイッターも削除。新潮も「コロナワクチンを『絶対に打ちたくない』と医師が言うワケ」という記事を(WEBサイト『デイリー新潮』から)削除。さすがに今回は世論の反発に抗しきれずに、皆さん撤退しつつあるという状況です。
マスコミが反ワクチン報道になった理由~歪んだ社会正義の問題
佐々木)なぜ新聞、テレビ、雑誌のマスコミがここまで反ワクチンなのか。これは誰もわからない、不思議で仕方がありません。ツイッターなどを見ると、皆さんおっしゃっているのが、「視聴率を稼ぐためならそれでもいいのか」とか、「新聞を売るためならそれでいいのか」と言っている人がいます。 飯田)そうですね。 佐々木)もちろん会社としては儲けなくてはいけないというのはありますが、毎日新聞出身でずっと社会部で記者をやっていた身からすれば、そこまで金のことは考えていません。それぞれの記者、もしくはデスククラス、彼らがいちばん重心を置いているのは「社会正義」なのです。ですから、今回の問題はお金や利益のためという話ではなくて、「歪んだ社会正義の問題」なのです。 飯田)なるほど。