欧州、イスラエル首相逮捕状に戸惑い ハンガリーは招待で対抗 独仏はICC協力明言せず
【パリ=三井美奈】国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に戦争犯罪容疑で逮捕状を出したことを受け、欧州連合(EU)で対応が分かれている。ハンガリーやオーストリアは強い反発を表明。イスラエルの自衛権を支持する独仏は、ICCへの協力義務を果たすか否かの明言を避けた。 EUでは全27加盟国が、ICCに締約国として加盟している。締約国は国内に容疑者が入った場合、ICCからの逮捕や引き渡しの請求に応じる義務を負う。 だが、ハンガリーのオルバン首相は22日、ICCの逮捕状は「司法ではなく、事実上の政治介入だ」と非難。対抗措置として、ネタニヤフ氏をハンガリーに招待すると表明した。 オーストリア外務省も声明で、逮捕状は「理解し難い」と反発した。ICCが民主主義国家イスラエルとテロ組織であるイスラム原理主義組織ハマスを同列に扱うものだと批判し、「裁判所の信頼性を損なう決定」と位置付けた。ICCがイスラエル、ハマスそれぞれの指導者に同時に逮捕状を出したためだ。 フランス外務省声明は、ICCの独立を尊重するとしたうえで、イスラエルとハマスを同列に扱うことはできないと強調した。ドイツでは22日、政府報道官が逮捕状への対応は検討中だと述べた。「ドイツはイスラエルと独自の歴史で結ばれ、責任を負う」として、独ナチスによるユダヤ人虐殺の過去に触れた。 一方、オランダやベルギー、イタリア、アイルランドは相次いで、ICC規程に沿って協力義務に応じる構えを示した。オランダ公共放送NOSによると、同国のフェルドカンプ外相は今月イスラエル訪問を予定していたが、中止した。イスラエル側との協議で決まったとしている。 ICCは21日、ネタニヤフ、ガラント両氏に加え、ハマス軍事部門のデイフ指導者に対しても、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を出した。