悔いなき敗戦の真実。ベルギー戦は世界での日本の現在地を知る名勝負だった
80分、日本ベンチが本田と山口蛍を投入する。本田と香川が同時にピッチに立つのは今大会初めてのことだ。86分にはシャドリとルカクの決定的なシュートをGK川島が立て続けに防ぎ、アディショナルタイムには、本田のフリーキックがベルギーゴールを強襲。これはGKティボー・クルトワのスーパーセーブに遭ったが、日本がコーナーキックを獲得する。 アディショナルタイムは5分に突入。あとワンプレーか、ツープレーか……。 左コーナーキック。勝ち越しを狙って本田がゴール前に蹴ったボールは、しかし、クルトワにキャッチされ、速攻を浴びる。ケビン・デ・ブライネが高速ドリブルで突き進んで右に展開。トマ・ムニエのグラウンダーのクロスが中央に蹴り込まれる。長谷部のマークに遭っていたルカクがスルーすると、フリーのシャドリが飛び込んできた――。 もしあのとき、本田がショートコーナーを選択して時間を使っていたら、試合は延長戦に持ち込まれていただろう。 だが、ゴールを目指したからといって、その選択を誰が非難することができようか。 その直前、ほとんど完璧なブレ球でゴールを強襲し、得点まであと一歩まで迫っていたのだ。あのコーナーキックが誰かの頭に合うか、GKにキャッチされるかは、紙一重の勝負でもあった。 やはり、問題はカウンターに対するリスクマネジメントだろう。ベルギーは「今大会最高のカウンターを持つチーム」と評価されている。2点を先行し、そのアドバンテージを失い、しかし、勝ち越しが狙える、押せ押せのムードのなかで敵の最大の武器に対するケアを忘れてしまった――。 しかし、死力を尽くして90分を戦い抜いた彼らに、それを指摘するのは酷だろう。 そのことに意識が回らないほど消耗させられていたのかもしれないし、そのことを忘れてしまうほど、ベルギーの息の根を止められるチャンスの気配を感じていたのかもしれない。 それくらい極限の戦いを強いられてきたのだ。