悔いなき敗戦の真実。ベルギー戦は世界での日本の現在地を知る名勝負だった
壮絶な打ち合いの余韻を残すロスタフ・アリーナ。終わったばかりのゲームは48分、柴崎岳の芸術的なスルーパスから、原口元気がサイドネットにボールを蹴り込んで日本が先制。さらに52分、香川真司からボールを預かった乾貴士がゴール右隅へ、無回転シュートを叩き込み、リードを広げた。 思うようにパスが繋がらず、エデン・アザールやロメル・ルカクが苛立ちを見せる。予期せぬ2点のビハインドに、ベルギーが動揺しているのが伝わってくる。 「一瞬夢を見ましたね」と長友は振り返った。 「試合中、いけるんじゃないかって」。 だが、その夢は一瞬にして砕け散る。 ゲームの流れがにわかに変わるのは65分、身長194センチのマルアン・フェライニと、サイドアタッカーのナセル・シャドリが投入されてからだ。 パワー、高さ、スピードを補強したベルギーが反撃の色を強めていく。 そして69分、日本のゴールが破られる。乾のクリアボールが空中に舞い上がると、ヤン・ヴェルトンゲンがヘッドでファーサイドに折り返す。これがGK川島永嗣の頭上を越えて、サイドネットに吸い込まれるのだ。 長友が振り返る。 「正直、向こうが勢いづいたなって。1点返して相手が明らかに目を覚ましたというか。勢いがまったく違ったし、途中から入ってきた選手、フェライニと22番(シャドリ)。相当なフィジカルとスピードがあって、セットプレーもめちゃくちゃ怖かった」 果たして、その不安は、現実のものとなる。74分、アザールのクロスをフェライニが頭で合わせ、再び日本のゴールネットが揺れるのだ。 まるで往復ビンタのような日本の2ゴールで、ベルギーが目を覚ましたのは確かだろう。しかし、本気のベルギーと戦うことこそ本望だった、と西野監督は明かす。 「今日のミーティングでも本気のベルギーと戦いたい。そのためには自分たちがフルパワーで、ベルギーの本気を引き出さなければいけない、と」 ここから日本とベルギーの激闘は、いっそう熱を帯びていく。