「サザエさん」長谷川町子 「嫁のメルヘン」時代を先取り 【あの名作その時代シリーズ】
「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は08年3月2日付のものです。 ********** 長谷川町子は現在の福岡市早良区西新で終戦を迎えた。彼女はこの地で生活しているときに「サザエさん」を着想している。当時暮らした家は現在は取り壊されてないが、今一帯を歩くと、モダンなマンションが立ち並ぶ中に「あ、サザエさんの家だ」と言いたくなるような古い木造住宅が何軒か残っていて驚かされる。 漫画は近くの海辺を散策中に考案され、登場人物に海産物の名が付けられた。今は埋め立てで海岸線が遠のいているが、現在の西南学院大学の敷地北側はすぐ海だった。地元の西新校区自治協議会会長の林暁男さん(75)は振り返る。「埋め立て前は静かな夜には波打つ音が聞こえとりました」 この福岡で生まれた「サザエさん」には、一つのちゃぶ台を囲む大家族のイメージがある。それを古き良き家族像として「三丁目の夕日」的なノスタルジーで受け止める人も多い。確かに一つの家に三世代が同居するような家庭は少なくなった。一方で
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