名古屋中1いじめ自殺事件「なんですか、これは?」個人情報“誤廃棄”に遺族が怒り…国所管の独立行政法人で人為的ミス
遺族「廃棄が大問題なのに、JSCは漏洩していないことを強調」
華子さんの遺族は、2019年度に災害共済給付を申請した(21年に市によっていじめと自殺の関連性が認められ再請求)。申請書類には、華子さんが入部したソフトテニス部内での人間関係(いじめ)や、肉体的、精神的な疲労状態についてなどが書かれていた。 しかし、今年7月、父親の信太郎さんのもとにJSCから手紙が届いた。 「家に帰ったら封筒が1枚ありました。なんだろうと開けてみると、『個人情報の滅失について(お詫び)』というもので、内容は十数行でした。『個人情報の漏洩はしていないから安心してください』『再発防止に努めます』とありました。それだけです。なんですか、これは? と思いました」(信太郎さん) 信太郎さんはすぐにJSCに電話。 「『個人情報は漏洩してない』と何回も言われるため、『その担保どうやって取るんですか?』と聞くと、『係員が最終の廃棄までついていた。だから漏洩していない。第三者が見る機会はなかった』というのです。そもそもなんでこんなことになったのか聞くと、『本来は複数人でやる作業ですが、今回は忙しいとかスケジュールの調整がつかずに1人でやった。そしたらこうなりました』というのです」 保存期間内に個人情報を破棄したとなると内規違反になるが、担当者は処分されていない。また、JSCのホームページには、手紙にあった『個人情報の滅失について(お詫び)』という文言は見当たらず、現時点で廃棄について公表はしていない。 「公表は考えていないようです。そもそも廃棄が大問題なのに、漏洩していないことを強調していて、危機感のなさにイライラしました。話がかみ合わなかったです。行政のガバナンスはどうなっているんでしょうか」(信太郎さん)
娘が亡くなって1年間「災害共済給付を知らなかった」
実は、JSCの災害共済給付をめぐっては、申請時にも納得いかないことがあったと信太郎さんは話す。 「そもそもJSCの災害共済給付があることを知ったのが、娘が亡くなって1年後です。私たち遺族は弁護士が見つかるまでの1年間は自分たちだけでやっていました。学校や市教委との交渉などが自分たちだけではどうしようもなくなり弁護士を探していました。なかなか見つからなかったのですが、ようやく今の弁護士に出会いました。 弁護士が見つかれば、着手金が必要になります。しかし、私は娘のことがあって仕事を休職していましたし、金銭的に苦しかった。そのことを率直に弁護士に話しました。すると、『給付金、支払われているでしょ?』と言われました。そのとき、初めてJSCのことを知りました。学校からは何も聞いていませんでした」 信太郎さんが学校に電話すると、「そろそろお父さんにお知らせしようと思っていたんです。ただ、華子さんの件は、学校の管理外で申請しても通らないので説明してこなかった」と言われたという。 「給付が支払われるかどうかは学校が決めることじゃないはずです」(信太郎さん) 華子さんが亡くなった1月5日は冬休み中。華子さんはソフトテニス部の合宿に行く予定だった。 ソフトテニス部の合宿は、学校の部活動ではなく、教師個人が行っているものという位置付けだった。そのために、学校は「学校管理外」と言ったのだろう。 しかし、自殺の原因にいじめが関係していた場合、自殺日に関係なく、学校事件として扱われ、災害共済給付の対象になり得る。学校側の安全配慮義務や予見可能性の有無は、民事訴訟と違って関係がない。