戻らない住民「高台移転」のいま 石巻市雄勝地区
高台移転と災害危険区域の指定がある限り、雄勝の人口が増えることはないという阿部さんの意見に石巻市市役所復興政策課はこう言います。 「現状の高台移転と災害危険区域の指定では外からの人が移住できないのはその通りです。しかしこれは現在被災して、仮設住宅に住んでいる人の住居確保が最優先のためで、それが落ち着いたら住民はもちろん県、国とまちづくり政策を策定し、人が集まるような計画も推進していきたいと思っています。災害危険区域には住居は建てられませんが、商業施設などを作り、広く全国から観光客が来るような案もありだと思います」 それにしても、なぜ自分たちが住まない復興計画に雄勝地区の人々は合意したのでしょうか。阿部さんはこう言います。 「それは行政の説明やメディアの取材、世論の雰囲気をみて、高台移転はダムの建設や基地の接収のように決まってしまっている避けがたい国策だと感じたからです。早く生活再建したい自分のニーズにはあわないけど、国策だから仕方がない、同意しようという意思が働いた。その結果、自らが参加しない計画に同意して、その同意のもとに地元行政は誰も戻らない復興計画をいまも頑張って推進しているのです」 災害危険区域の商業利用は多くの自治体で検討されている案件です。しかし東北の沿岸部にいくつも商業施設が林立し、すべてが観光客や地域の人々が集まる場所になるのでしょうか。せっかくの復興が人の来ない「箱モノ」建設で終わらないよう、これからも注視していく必要がありそうです。 (ライター・島田健弘)