いま注目されている新たな投資の選択肢 J-REITとは?
J-REITの仕組み
投資信託は大勢の投資家資金を集め、それをまとめて運用する「ファンド」と呼ばれるものの一種で、投資家保護を目的とする投資信託法という法律で定められた制度です。もちろん投資は自己責任の世界ですから、投資対象の価値が下がることによって投資家が損失を受けることはあります。しかし、それ以外の要因(運営会社の破たんなど)で投資家の資金が失われないように設計されたものが投資信託というわけです。 投資信託には、契約型と会社型という2つのタイプがあります。株式投資信託など一般的な投資信託は、信託制度を活用した契約型という仕組みを採用しています。これに対して、J-REITでは「会社型」という仕組みを使っています。 会社型投資信託では、「投資法人」と呼ばれる専用の特別な会社が設立されます。この投資法人が、投資口と呼ばれる株式に相当するものを発行して大勢の投資家の資金を集め、それを運用してその運用収益を投資家に分配します。 投資法人は、こうした仕組み(スキームとかストラクチャーと呼ばれる)を成立させるための“箱”のようなもので、一種のペーパーカンパニーです。ペーパーカンパニーといっても、怪しげな架空の会社というわけではなく、あくまでも投資家保護のための仕組みのひとつと考えてください。 この投資法人には基本的に従業員がいないので、実際の業務をどうしているかというと、それぞれ専門の業者に委託することになります。たとえば、投資をする不動産の選定や運用方針の決定など、根幹となる経営管理の業務は、アセットマネジャーと呼ばれる不動産投資顧問業者に委託されます。また、投資した物件は一般的には信託銀行が預かり、さらにプロパティマネジャーと呼ばれる不動産管理会社が実際の管理業務を担当します。投資法人という箱を利用することで、こうした専門業者による分業体制が可能となるのです。
J-REITの市場規模
REITは、もともと1960年に米国で生まれた制度なのですが、いまでは世界各国で導入され、かなり大きな市場を形成しています。日本版であるJ-REITは2000年に解禁され、翌01年には投資口の上場が始まりました。 上場というのは、東京証券取引所などの取引所で誰でも取引ができるようになることを意味しています(一般の投資家は、証券会社に注文を取り次いでもらうことになります)。株式投資でも、一般の投資家が売買するのは、取引所に上場されている上場株式です。J-REITの投資口も、この上場株式と全く同じように、取引所で自由に売買が可能です。 ちなみに、J-REITにはこのような上場REITのほかに、特定の投資家だけが取引所を介さずに投資する私募REITと呼ばれるものがあります。ただし、一般の投資家にとっては、J-REITといえば上場REIT、という具合に捉えていただいて問題はないと思います。 そんなJ-REIT(上場REIT)は15年末現在で52銘柄あり、発行済みの投資口数に時価をかけて合計した時価総額でみると10.6兆円に達しています。この市場規模は、ほかのREIT先進国と比べるとまだ十分に大きくはありません。ですが、その分、今後の成長の余地は大きいと考えられますし、一般の投資家が投資対象の一つとして考えるには十分な市場規模といえると思います。 (ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也) 著書に『入門 JーREITと不動産金融ビジネスのしくみ』、『入門 金融のしくみ』『世界一やさしい金融工学の本です』(すべて日本実業出版社)。