『モアナと伝説の海2』好スタート ディズニー大復活の先にある「洋画の未来」とは?
12月第2週の動員ランキングは、ディズニー・アニメーション・スタジオ『モアナと伝説の海2』が、オープニング3日間で動員67万9000人、興収9億3800万円をあげて初登場1位となった。公開前日に行われた先行上映を含んだ累計成績は動員69万7000人、興収9億6400万円。これは2016年に公開された前作『モアナと伝説の海』とのオープニング3日間での興収比で135%の成績。『モアナと伝説の海』の最終興収は51.6億円だったので、単純計算すれば70億円くらいのヒットが狙える初動の数字だ。 【写真】『モアナ2』が1位! 12月第2週の動員ランキングTOP10 ちなみに今年8月に公開された『インサイド・ヘッド2』の累計興収は52.7億円。こちらも『モアナと伝説の海』とほぼ同じインターバル、9年前の2015年に前作『インサイド・ヘッド』が公開されていて、その最終興収は40.4億円だったので、興収比で130%ということになる。コロナ禍以降、2010年の『トイ・ストーリー3』や2013年の『アナと雪の女王』に代表される興収100億円超えのメガヒットを連発していた頃のディズニー(及びピクサー)のアニメーション作品の勢いはすっかり落ち込んでしまっていたが、ここにきて確実に回復傾向ーーどころか、単純な前作との対比では上昇傾向にある。 もっとも、今年の北米における『インサイド・ヘッド2』や『モアナと伝説の海2』のヒットの規模は「上昇傾向」というようなレベルをはるかに超えていて、『インサイド・ヘッド2』の累積興収は前作の183%(グローバルでは198%)、『モアナと伝説の海2』の初動興収にいたっては247%という驚愕の数字を叩き出している。その背景には、ライバル作品の不在、公開作品の数を絞ったことからくる宣伝の集中があって、特にファミリー向けの作品はYouTube Kidsに動画広告を大量に流すことによって、ファミリー層の観客の掘り起こしに成功しているのだという。コロナ禍とダブルストライキ期を経て、現在のところアメリカの映画界を救ったのはファミリームービーのイベント化であり、それは今後も加速していくだろう。 同じような手法は日本でも応用可能、というか既に進行中だ。言うまでもなく、日本には他にもアニメーション映画とテレビドラマ映画化(今週2位に初登場した『劇場版ドクターX』の6億400万円というオープニング興収も通常週なら余裕で1位を獲れた数字だ)という興行の大きな柱がある。そこで、いわゆる「洋画メジャー」が本国の意思決定によってファミリームービーへと宣伝のリソースをさらに集中していけば、どのような作品が割を食うことになるかは明白だろう。
宇野維正