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芸術が訴える「偏見」に気付けるか? Black Lives Matterと多様性

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ELLEgirl

Black Lives Matter(BLM)のスローガンのもと、黒人差別や有色人種に対する人種差別の根絶をもとめる抗議運動。もともと草の根的に始まった活動は、新型コロナウィルスの感染拡大による都市封鎖が明けるとともに、瞬く間に世界中に広がった。この歴史的な瞬間において、アートは人種差別の問題とどう向き合うべきか? アートキュレーターとして活躍するエル・ガール ユニ浅野菜緒子と、芸術界における差別問題と多様性の大切さについて考える。

19世紀美術を鑑賞するときに気付くべき「多様性の欠如」

“多様性”という視点をもったとき、特定の人々が公然と抑圧された時代に生み出された芸術は、私たちに“制度的人種差別”の根深さを語りかける。西洋の芸術史において、長きにわたり有色人種が積極的に描かれなかったことは、美術館の展示室や美術史の教科書を眺めれば一目瞭然。アート作品にBIPOC(black, indigenous, and people of color、一般的に白人以外の有色人種) が描かれる場合、その多くは新約聖書に登場する東方三博士などの宗教的人物か、シェイクスピア劇のオセローといった戯曲の登場人物、あるいは召使や奴隷としての姿で、それは私が専門とする19世紀イギリス美術においても同様だ。そのような扱われ方が数世紀ものあいだ受け継がれた結果、現代に生きる私たちはこうした点をさして気にかけることなくアートを鑑賞している。でも、展示室の壁が真っ白な影に埋め尽くされていることに違和感を覚えないのは、果たして自然なことだろうか? BIPOCが描かれた作品を、私たちはどのような視点をもって理解すべきだろう。 描かれた黒人は多様な美の象徴? それとも…… 19世紀半ば、ラファエロ以降の美術様式を規範とする当時のアカデミーの伝統に異を唱える芸術家集団「ラファエル前派兄弟団」がイギリスで誕生し、近代芸術に大きな影響を与えた。その創設メンバーのひとり、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティによる「愛しい人」(1865-66、テートギャラリー)は、聖書の雅歌を題材に、豪華な衣装を身に着けた女性たちを描いた華やかな作品だ。画面中央には白い肌に明るい髪色をした花嫁、それを介添人の女性たちが囲む。前景に立つ小姓の少年と、周りの女性たちが皆一様に、花嫁よりも濃い肌や髪色をしている点に注目したい。これはロセッティならではの、多様な美の礼賛だろうか? それとも、複数の研究者が論じるように、周囲の人物によって花嫁の白さを一層際立たせ、当時一般的であった「白=美の規範」という価値観を暗示しているのだろうか? 本作の制作当時、イギリスではすでに奴隷制度は廃止されていたが、半裸で花を捧げ持つ黒人少年の姿から、植民地主義と奴隷制度が透けてみえる。

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