「刑務所は再犯生産工場や」 刑期を終えた河井元法相 獄中で初めて知った受刑者たちの”声なき声”
●「囚人のパラドックス」と「受刑者脳」
<大多数の受刑者は工場では真面目に作業し、居室でもおとなしく過ごし、毎日規則正しい生活を送っている。しかしながら、そうやって一日も早く仮出所を認められたい一心で受刑生活に適応しようと真剣に努力すればするほど、次第に「塀の外」ではなくて、「塀の中」の方が「現実」に思えてくる。そして、出所後の自分の姿が想像しにくくなってしまう>(「獄中日記」から引用) さらに、受刑者は社会復帰後の生活に不安が高まる一方となるため、とりあえず今は刑務所の生活だけを考えようと思考停止に陥ってしまうという。 こうした実情を河井さんは、「囚人のパラドックス」や「受刑者脳」と表現する。加えて、日本は諸外国と比べて社会と刑務所の間にある「壁」が厚いことも拍車をかけていると指摘する。 更生に役立つ情報の不足、心情把握の機会の欠如、自主性を奪う処遇、閉鎖的な組織風土など、日本の刑事施設はさまざまな課題を抱えている。しかし、それは刑務所だけの問題ではないという。 「起訴することによって、あるいは判決文を書くことによって、目の前の人が刑を終えて出た後にどういう人生を歩むことになるのか。そうしたことへの想像力が欠けているのではないでしょうか。裁判所や検察庁は自分の庭しか見ていないような気がします。裁判官や検察官には一週間でもいいので刑務所に体験入所してほしい(笑)。そうすれば少しでも日本の刑事司法の全体像をつかめると思います」 河井さんは、所属や肩書きの部分が空白となった名刺を手に新たなスタートを切ろうとしている。 「再犯のない社会作りの役に立ちたい。世のため人のために尽くし、日本や広島のために貢献していきたいと考えています」