日本高校記録持つ順天堂大・吉岡大翔が箱根路に弾み…同じ苦悩知る「先輩」の助言に光が見えた
2人が再び相まみえた6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では、3組トップの好走で貫禄を示した石田に対し、吉岡も同組5位と健闘した。10月の箱根駅伝予選会では、苦手の暑さに苦しみながらチーム4位の個人98位と踏ん張り、順天堂大は次点と1秒差の10位で本大会出場権を獲得。着実に復調へのステップを踏み、3週間後の1万メートル自己ベスト更新へとつなげた。
待ちわびる再対決
昨今はシューズの機能やトレーニング手法の向上で、大学生でも1万メートル27分台のランナーが珍しくなくなった中、今回の吉岡の記録は決して際立つものではない。それでも「勝負に徹した中で自己ベストも出すことができた。ちょっとずつ力がついてきているのかな」と語る表情は、憑(つ)き物が落ちたように晴れやかだった。
長門監督もレース直後、「一歩一歩上がっていかないと。27分台とかにジャンプしちゃったら大変だから、楽しみは取っておかないと」とすかさず声をかけ、成長に太鼓判を押した。
一方、吉岡の復調を後押しした石田は、夏場の故障が尾を引き、駅伝シーズン初戦の出雲を回避。復帰戦となった11月3日の全日本は6区区間21位と苦しんだが、練習の一環で出場した24日の小江戸川越ハーフマラソンでは予定タイムより1分以上速い1時間5分8秒で快調に走り切り、「久しぶりにいい感じで走れた」と好感触をつかんでいる。
「次、一緒に走った時は勝ちたい」と意気込む吉岡に対し、石田は「その時は負けたくない。全力で戦い合って、また話ができればと思う」と、対決を待ちわびている。試練の時を乗り越え、強さを増した2人の天才ランナーが、箱根路でぶつかり合う――。そんなドラマが実現することを、期待せずにはいられない。