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上地結衣が「信じられない」と喜びの涙。 全仏OP初制覇で観客を魅了した

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その一歩を踏み出すことを決めた上地は、練習環境を整え、主戦場を世界へと移した。前述の全仏オープンで優勝したのは、グランドスラムに参戦して3シーズン目。強敵にもまれ、加速度的に進化を遂げるなかでの出来事だった。  ただ、自身が成長するにつれて、車いすテニスの奥深さも同時に感じていた時期だ。「優勝はとてもうれしい。でも、これはリオパラリンピックへの過程にある、ひとつの試合」と自身の立ち位置を冷静に見定め、千川理光(ちかわ・まさあき)コーチもまた「"本当の世界一"に見合うように、これからしっかりと練習に取り組まないと」と語っていたことが印象に残る。  この時、車いすテニス界は男子も女子も競技力が大きく向上し、とくにトップクラスは誰が勝ってもおかしくない稀にみる混戦模様だった。全仏を振り返り、2人は「頂点に立っても、結果は対戦相手の調子による面も大きく、強化してきたことを毎回本番で出すことは簡単ではないことを痛感していた」と、語っている。2人が目指す"本当の世界一"の姿は、まだ先にあるのだ、と。  だからこそ覚悟を決め、そこからブレずに邁進し続けることができた。最高峰のパラリンピックという目標に向けて、サーブの改良や競技用車いすの改造にも積極的に取り組み、体格の勝る海外勢に対抗するため、バックハンドトップスピンの習得にも挑戦した。低い弾道で相手コートの前方にボールが落ちる有効なショットだが、ボールを打つ際に身体のひねりや強い筋力が必要になるため、当時は女子でマスターする選手はほぼいなかった。  ハードな体幹トレーニングを重ねていった上地は、精神面でも大きく成長し、2016年リオパラリンピックで銅メダルを獲得。そして、現在の活躍につながっている。

2018年にジャカルタで開かれたアジアパラ競技大会で、上地はシングルスで優勝。男子を制した国枝慎吾(ユニクロ)とともに、東京パラリンピックの出場権を獲得した。早々に代表内定を得たことで、これから選考に臨むライバルたちよりも十分な準備をして本番に臨むことができる。  自分のテニスをさらに追求するなかで迎えた2019年は、グランドスラム制覇はならなかったが、満を持して臨んだ今年の全豪オープンで、上地はシングルスで3大会ぶり2度目の優勝を果たした。さらには、盟友ジョーダン・ワイリー(イギリス)とペアを組んだダブルスも制して単複2冠を達成するなど、調子を上げている。  コロナ禍の影響でパラリンピック開幕は1年延期になったが、常に自分と向き合い、壁を乗り越えてきた彼女に迷いはないだろう。来年、27歳で迎える3度目のパラリンピックで目指すのは、金メダル。今もなお強敵ぞろいのオランダ勢をはじめ、すべてのライバルを倒して手にする"本当の世界一"だ。これまでの経験と自国開催のエネルギーを力に変え、さらにパワーアップした姿を見せてくれるに違いない。

荒木美晴●文 text by Araki Miharu

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