渡辺恒雄氏死去、政財界から悼む声…菅義偉氏「日本のあるべき姿について、意見を聞きたくなる人だった」
渡辺恒雄氏が死去したことを受け、歴代首相らは記者団の問いかけに対して生前の交流を思い出し、口々に別れを惜しんだ。
自民党の岸田文雄・前首相は「父の旧制高校の同級生で、若い頃から親しく指導していただいた。厳しい一面も示された方ではあるが、私にとっては絶えず心を温める優しい人柄だった」と述べた。「言論人として大きな影響を日本の戦後の歴史に残された。一つの時代が終わった」とも振り返った。
菅義偉・元首相は「経営者、ジャーナリストとして、日本全体を見て何を政治に求めるかを考えていた。日本のあるべき姿を考える時に、どうしても意見を聞きたくなる人だった。安倍晋三・元首相もよく(話を)聞いていた」と語った。
森喜朗・元首相は「巨星墜(お)つという言葉では物足りない。我々にとっては最も良き相談相手というか、父親という感じがした。難しい問題があれば相談に乗ってもらえた」と悼んだ。
民主党政権末期を率いた立憲民主党の野田佳彦・元首相は、尖閣諸島(沖縄県)の国有化問題について相談するため、2012年に渡辺氏を首相公邸に招いた。「『歴代の首相とたくさんお付き合いしてきたが、公邸に招いてくれたのはあなたが最初だ』とうれしそうだった」と懐かしんだ。
額賀衆院議長は「新聞記者出身の政治家として、公私ともにご指導いただいた。時代を先導してきた論客を失うことは大きな損失だ」とのコメントを出した。
経済界からも渡辺氏の死去を悼む声が相次いだ。
財界関係者らでつくる読売巨人軍の応援組織「燦燦(さんさん)会」の会長を務めるキヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は「長年の親交を通じて、生粋の愛国者であり、常に日本の将来を案じておられたと感じていた。今はただご冥福(めいふく)をお祈り申し上げたい」とするコメントを寄せた。
経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)はコメントで「長年にわたり、日本の言論界を力強く牽引(けんいん)され、歴代国家指導者の指南役として、わが国の発展に大きく寄与された」としのんだ。
トヨタ自動車の豊田章男会長はコメントで「私が社長に就任した際、経営者である前に人としてどうあるべきか、1対1で長い時間をかけて話してくださった。情報があふれ、価値観が多様化し、善悪の区別が難しくなる中、日本や未来をもっとよくするために働くことの大切さを教えていただいた」と述べた。