日本のモノ作りの舞台裏 高専ロボコンに魅せられた人たち
企業の人事担当からみた高専ロボコン
半導体製造装置のサービスサポートやコンサルティングを行う東京エレクトロン FE株式会社(東京都府中市)。人事総務部の佐久間象山部長(45)は、高専卒業生をこう評価する。「実技を通じて技術を学んでおり、学ぶ姿勢がしっかりしている。体と手先が勝手に動くモノ作りの強さはほかと比べても群を抜いている」。 東京エレクトロン国内グループ社員約8500人のうち約600人が高専出身者だという。東京エレクトロン FEの阪本甚三郎社長も現在の熊本高専の出身で、高専ロボコンの協賛はかねてからの夢だった。 同社が高専ロボコンに協賛したのは2007年。高専は全国に約60校あり、卒業生は数千人にのぼる。優秀な学生は争奪戦となる。佐久間部長は高専生をリクルートするチームを結成。全国の高専を訪ね歩いた。 ロボコンに携わっている学生たちの間では、同社の知名度が当然上がった。「自由応募だと広く網にかけるようなものだが、全国の高専と“一本釣り”もできるようになった」と手応えを感じている。 今年同社に入社した松江高専出身の難波晟史(あきふみ)さんは、佐久間部長が“一本釣り”してきた学生の一人だ。現在、半導体製造に欠かせない熱処理成膜装置の制御設計に関わっている。「ロボコンを通じて自分が成長したと思っています。みんなで一つのものを作るのに欠かせない協調性が身につきましたし、ものを作るということがさらに好きになりました」。 2010年、松江高専のチームメンバーとして全国大会に出場した経験を持つ。ロボット製作はほかの学校と同じように、基板を作る担当、プログラムを組む担当など、役割が決まっている。2年と3年では製造を担当。4年と5年は設計を担当した。自分に与えられた役割のなかから、自分でやることを見つけて自分でやる。努めて暇をつくることを避けた。ほかのメンバーのサポートも惜しまずにやった。 一つの目標に向かってチームが一丸となって取り組む。難波さんにとって、ロボコンとは何だったのか? 「当然、優勝することを目指していました。そのためにチームを結成し、チームメンバーみんなで目標を達成しようとがんばりました」。 「いまは自ら考える力が役に立っている。ロボコンをやっていなかったら、言われることをやるだけだったと思います」と振り返った。 11月24日、東京都・墨田区の国技館で開かれた全国大会に観戦に行った。かつて自分が立った舞台を観客席から眺める。自分とは関係のないチームが戦っているのに緊張する自分がいた。何か月もかかって作ったロボットが、たった数分で勝敗が決まり、消えていく。作る苦労を知っているだけに、負けたロボットを見ると「寂しい」気はするが、ロボコンを卒業しても、どんなロボットが出場するのか楽しみで仕方がない。