日本のモノ作りの舞台裏 高専ロボコンに魅せられた人たち
未来の技術を作っていくアイデア
高専ロボコンは優勝、準優勝と勝者を決める競技ではあるが、それ以上に名誉ある賞が「ロボコン大賞」だ。勝ち負けに関係なく、ロボットを作るにあたって最も独創的なアイデアと技術力を持つロボットを表彰する。 「ロボコン大賞があるおかげで、作る技術だけでなく、考える力を育むことに成功している」と話すのは、東京都荒川区にある東京都立産業技術高等専門学校(産業技術高専)の深谷直樹准教授だ。競技専門委員としてロボコン事務局に身を置いている。委員になってからは公平性を期するために退いたが、委員に就任する前は、指導教員として同校の学生の技術向上に関わってきた。 技術的にも、ずば抜けたアイデアでも、「こいつすごい!」と思われることは、高専生にとって何物にも代えがたい栄誉なのだという。思春期を迎えた学生は、誰にも負けたくないという気持ちが人一倍強い。認められたいという気持ちも強い。 ロボコン大賞をとるには、勝つだけでなく、いかに常識を覆した大胆な方法でロボットを作るかという、競技選手としてではない「技術者としての視点とアイデア」が不可欠なのだ。 大会がロボットに要求するレベルは年々高くなっていく。「タイヤは使わず、歩行機構を使え」という。「コントローラーを使わず、センサーを使え」という。10年後、今の学生たちが企業の現場に配属されたとき、今ある技術を使いこなしていただけでは世界をリードして行けない。高専ロボコンは未来の技術を作っていく人材を輩出することを目論んでいる。 高専ロボコンは疑いなく「教育イベント」だと言える。 教育イベントであることが第一の優先順位なら、第二の優先順位は何なのか? 深谷准教授は「観客です」と言う。「子どもたちや保護者が見て、感動してもらいたい。熱気を持ち帰ってもらいたい。夢を見て欲しい。そうすることで、モノ作りが次の世代につながっていくことを期待しているわけです」。