日本のモノ作りの舞台裏 高専ロボコンに魅せられた人たち
テレビで見ていた舞台に自分が立つ
10月27日、東京都江東区のBumB東京スポーツ文化館で開かれた関東甲信越大会。会場の一番高い観客席から、競技を見つめていた男性がいた。佐々木俊英さん(24)。愛知県の自動車関連企業に勤務、工作機械を担当するエンジニアだ。高専ロボコンの卒業生で、2005年、2006年と高専ロボコンに出場した。 幼稚園のときから録画された番組を繰り返し見ていた。「ロボットが動いているのを見ていると楽しかったんですよ」。テレビで放映される番組を楽しむ一人の小さな視聴者だったが、小学校に上がって東京・国技館で実際の競技を観戦したとき、何か心に火がついた。「テレビで大会を見るだけでなく、自分が大会に出場したいと思うようになりました」。 本番の競技会場には、映像だけでは伝わり切らない何かがある。大音量で流れるアナウンサーの声や会場の熱気、興奮……。敗者インタビューでは、受け答えは静かだが、涙を浮かべる子もいる。そういう悔しさだとか、逆に突き抜けた喜びだとか、大会にかける真剣さが生で伝わってくる。 佐々木さんは、モーターを使ってピンポン玉を集めて飛ばすロボットを自作するなど腕を上げ、ロボコンに出場したい一心で2004年、国立東京工業高等専門学校(東京高専)に進学した。 いきなり表舞台には出られない。設計は上級生が担当。アルミに穴を開けて部品を作るところから始まる。部品加工の精度を上げる、強度を調整する。一回でうまくいかない。しかし、諦めない。チームで改善を考え、動かして、思い描いていたロボットに近づいていくことに熱中した。「こういう大会がないとモノ作りをする機会がありません。大会という目標ができることで、考えることがたくさんできました」。 そして二年目の2005年、全国大会に出場した。ロボットを操縦する大役を預かり、チームは準優勝とロボコン大賞に輝く。テレビで見ていた舞台に自分が立てたことの嬉しさ。そして「物を作っていく過程が純粋に楽しかった」と振り返った。