日本のモノ作りの舞台裏 高専ロボコンに魅せられた人たち
高専ロボコン。全国の高専生が作り上げたロボットが、一定のルールにもとづいて対決し、勝敗を決める競技だ。昨年25年の節目を迎えた歴史ある大会で、「理系の甲子園」と呼ばれることもある。高専ロボコン卒業生の多くは、そこで培った知識や経験、スキルを活かすためにメーカーなどに就職する。彼らの活躍に期待する一流企業の人事担当者もいる。この大会は日本のモノ作り技術者を輩出してきたと言っても過言ではない。
人間と一緒に遊ぶロボットを作るという難題
「ロボット、通ります!」。ピットと呼ばれる会場の舞台裏。ところ狭しと機械類が置かれ、NHKのカメラマンや大会関係者が往来するなか、ロボットを運搬する高専生たちが声を張り上げ、通路を開けるよう呼びかける。ロボットは、高専生たちにとって、競技で勝負するマシンであると同時に、自分たちの知恵と汗の塊でもある。ここで人に当たりでもしたら? 細心の注意が払われ、緊張感が常に漂っている。 Shall We Jump? 映画「Shall We Dance」をもじった第26回の競技課題。ロボットが高専生と協力しながら大縄跳びをやってのけるという難題だ。ロボットと高専生が“二人”で回す縄を高専生とロボットが跳ぶ。人間が操縦することなく、ロボットに実装されたセンサーだけでロボットを動かす。全国の高専124チームが、全国8地区で実施される地区大会に出場、選抜された25チームが全国大会に出場する。 番組を制作するNHKの斉藤潤チーフ・プロデューサー(42)はこう話す。「ロボットに縄跳びなんかできるのか? と大人は思うが、彼らもそう思う。しかし、彼らは試行錯誤しながら、これを5~6か月で作り上げてしまう。ぬいぐるみなどで仕立てあげられた鎧の下には、ものすごい工夫と技術が詰まっている。そのロボットが跳ぶさまを見てほしい」。 実際に15キロという重さがあるロボットが跳ぶさまは圧巻だ。ただ単に跳ぶのではなく、ロボットは縄の動きのタイミングを測って縄を跳ぶ。縄の動きをセンサーが感知してから何ミリ秒後に跳ねるようプログラミングされたロボットもある。ペットボトルで自作したエアシリンダーや圧縮したバネを利用してジャンプさせるなど機構はさまざま。タイミングを測るために音を使ったり、ジェスチャーを認識するセンサーKinect(キネクト)を使ったりするチームもある。