「活動の源泉は音楽」 繰り返すリズムが運んでいく健康や希望という場所
執筆、音楽、絵画、畑仕事、編み物、料理など、なんでも興味を持ったことはやってしまう坂口恭平さん(42)。ただ、「全ての活動の源泉になっているのは音楽だ」と言う。【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】 【前編はこちら】「大事なのは声にすること」 自分で自分の主治医になった男が語る「自分の薬」とは? 新作アルバム『永遠に頭上に』をリリースした坂口さんに、音楽や音楽とつながる様々な活動についてもお話を伺った。
音楽は全ての川の源泉
ーー音楽を作るときと文章を書くときは全然違うのですか? ほぼ一緒なんですけど、その源泉になっているのは音楽です。湧き水は音楽なんですよ。そこからいろんな川に流れていく。 例えば今、俺の頭の中にある世界は、ちょっと松江っぽい場所なんです。綺麗に削られた白い石が並んでいて、両脇に白い玉砂利がある。その奥に出雲のような日本家屋が建ち並んでいて、柿渋もだいぶん濃いめになっている。 そんな風景と、こちら側に堤防のようなものがあって、草がいっぱい生え、川面に雲が映ってる。もう止まらないんですよね、僕の場合。自分がバルブを外したときに見えているものがどんどん繋がっていく。 それが音楽になって、ギターがあればそれが歌になる。その時、白砂や松の木も見えたなというと、白砂や松の木もそのまま歌詞になっていく。 それが絵になると、以前は抽象画でした。長編小説を書いた後に気づいたのですが、今、描いているパステル画は、ほとんど全て小説に書かれていると担当編集者に指摘されたことがあるんです。 既にそのビジョンがあって、それと現実が合体したときに、もっと詩情を感じて作品になる。ただ綺麗とか、美しいというだけじゃなく、僕がかつてビジョンとして見ていた映像とリンクすることに驚いたり感動したりしてる時に、表現する側になるようです。 そしてその浮かぶビジョンは全部家の近所の風景なんですよ。それは興味深いことです。 ーー面白いですね。以前、ツイッターに書かれてましたが、坂口さんのおばあちゃんは地元の風景について「ここには何もない」と言っていた。けれども、坂口さんは東京で暮らした後、熊本に戻った時に、そうじゃないと気づいて創作のインスピレーションにされています。 そう、おばあちゃんは「退屈だ」とずっと言っていました。僕は戻った時に、先祖巡りをしながらその土地を全部調べました。16世紀にどれほどすごい場所だったか知っているんです。重要な貿易港だったので、港などの絵が全てすごいのには理由があるんですよ。 それまで調べたあげく、それでもそれを飛び越えるぐらいに日常で感じた綺麗、気持ちいいという感覚に従うという感じです。