株ブームへの助言も…岸博幸さんに聞く経済の展望 “トランプリスク”は「関税意識し過ぎるのも良くない」
富山テレビ放送
経産省出身でコメンテータとしても人気の慶応大学大学院教授、岸博幸さんに今年、富山がめざすところを聞きました。 元経産省の官僚で地域再生や経営戦略に詳しい慶応大学大学院教授、岸博幸さん。 まずは、今年の国内経済全般の見通しを聞きました。 *岸博幸教授 「今年の経済に関して日本に関しては『まあまあの状態』が続く。基本的にアメリカが調子良い状態が続く。日本も政府の経済対策で、ある程度成長していく」 経済はほどほど成長。しかし、「ある程度の経済成長」が見込まれるというものの不安要因も。 *岸博幸教授 「日本の場合、当然ながら今年の物価上昇は続く。生活する家計の側からすれば大変で様々な産業にとっても重しになる。トランプ大統領は日本相手にそこまで無茶苦茶なことをやるとは思わないが、関税引き上げをどんどんやるとなった場合、世界経済に影響が大きい。この場合はマイナスの影響があるかもしれない」 Q)富山県は製造業が盛ん。関税のリスクに経営者から心配の声もあるが? *岸博幸教授 「関税が上がった場合には輸出に影響がある。基本的には円安傾向が続くと思うので、その両方の要因が相殺することもあり得る。関税がどうなるか意識しすぎるのも良くないと思う」 一方、県内の産業界も注目する北陸新幹線のルート問題。 京都・大阪などが懸念を示し来年度着工を断念。 これに対して、岸さんからズバリ指摘が。 *岸博幸教授 「私は率直に言って(小浜・京都、米原ルート)どっちでもいいと思う。本当に魅力あるところは交通が不便でも人は必ず来る。新幹線が大阪まで早く伸びないとダメということは逆に思い込みだと思う。そんなことよりも地元の魅力を高めることの方がよほど優先」 北陸は日本の魅力詰まってる。優先すべきは地方の魅力向上、岸さんは富山を含む北陸をこう見ています。 *岸博幸教授 「北陸地方は日本のいい魅力がたくさん詰まった大事なエリア。地震で被害にあわれた方は大変な思いをされている。みんなで応援する必要がある。(地震で)逆に注目されるようになった面があり、今後より成長が期待できると真剣に思う」 そのうえで富山は金沢にない魅力の掘り起こしが必要と話します。 *岸博幸教授 「富山のように大自然、山も海も非常に素晴らしく食べ物も美味しい。そうしたものを組み合わせたエリアという意味で魅力は非常に高い」 折しもおととい、ニューヨークタイムズの「今年行くべき世界の52か所」に選ばれた富山市。 選定理由の「混雑を回避しながら文化的感動とグルメを楽しめる」。 ここに魅力向上のヒントがありそうです。 そして今年の経済の焦点、さらなる賃上げは。 *岸博幸教授 「最近は官邸が経団連にお願いすると賃上げという風潮があるが基本的に間違っている。当たり前の話だが、働く人の生産性が上がれば同じ時間で生み出す付加価値が増える。そのために知識や技術を身につける必要がある」 ここで、岸さんにひとつのデータをぶつけてみました。 「国のデータをもとに円グラフを作ったんですが、富山県も世帯年収300万円未満が30%を超えた。5年前は20%台だったのに増えている」 *岸博幸教授 「これが日本の地方の現実。富山に限定されない。失われた30年の影響は大きいので、日本全体が非常に貧乏になってしまった。日本人全体の平均年収はアメリカ人の半分以下、残念ながら地方は年収300万ぐらいの層が非常に多い。失われた30年で異常な状況で、そのためには当然ながら企業の賃上げが非常に大事」 岸さんは加えて、賃上げを政府や企業に任せきりにせず、学びなおし「リスキリング」で高い賃金が得られる転職も意識すべきと語りました。 もちろん、企業側も大きく意識を変える必要があるといいます。 *岸博幸教授 「失われた30年の間はデフレでみんな何もしなくて良かったが、これからは企業が頑張らないといけない時代。デフレの考えを延長している企業は淘汰されてしまう。富山の企業の皆さんも30年ぶりに『頑張らないといけないノーマルな状態に戻った』という意識を持ってやってほしい」 岸さんに「令和の株ブーム」についてこんなアドバイスもいただきました。 *岸博幸教授 「基本は長期分散投資リスクを下げてほどほどのリターンを毎年積み重ねる」 「短期間で大儲け」は絶対にないのでそうした詐欺に騙されないよう注意してください。
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