『デジモン』液晶玩具が新時代に突入! ウェアラブル端末型液晶玩具“バイタルブレス デジタルモンスター”の魅力を開発者に直撃
文・取材:マンモス丸谷 1997年、携帯型液晶玩具としてその歴史をスタートさせ、アニメやおもちゃ、家庭用ゲームなどにも展開され、2020年の現在もカードゲームやプラモデル、初代アニメをリブートしたテレビアニメが放映中など、バンダイナムコを代表するコンテンツとして動き続けている『デジタルモンスター』。 【この記事の画像をもっと見る】 『デジモン』の愛称で親しまれる同ブランドが、原点である液晶玩具の進化系とも言うべき新商品、“バイタルブレス デジタルモンスター”(以下、バイタルブレス)を、2021年3月13日に発売することを明らかにした。 ここでは、『デジモン』関連の商品・ブランド展開をプロデュースする原田真史氏と“バイタルブレス”の商品開発を担当する関戸大彦氏に、ブランドの今後の展望などを交え、お話を聞いた。 『デジモン』の新液晶玩具“バイタルブレス デジタルモンスター”が本日から予約開始。活動データでデジモンを育成・進化させるウェアラブル端末 https://www.famitsu.com/news/202012/18211511.html きっかけとなったのは、『デジモン』のリブートプロジェクト ――“バイタルブレス”を開発するにいたった経緯をお教えください。 原田 そもそもは、バンダイナムコグループとして、『デジモン』というIPをさらに広くユーザーの皆様に訴求していくために、2019年1月から『デジモン』のリブートプロジェクトが立ち上がったことがきっかけになっています。バンダイナムコグループでIPを多角的に展開することで、当時のファンの方への向き合いはもちろんのこと、『デジモン』に初めて触れるお子さんや新しくファンになってくださる方へ向けて、魅力をさらに広めていきたいという趣旨のプロジェクトです。 『デジモン』ブランドのスタートは携帯型液晶玩具なのですが、アニメのファンも非常に多いです。『デジモン』に関しては、玩具やゲーム、アニメなど、各作品で世代も含めて細分化していて、それぞれのコンテンツをファンの皆さんが支持してくださっているので、そこを一歩進めて、「『デジモン』全体が好き」と支持していただけるようになればと思っています。 『デジモン』は、これまで各部署が独自に商品を展開するケースが多かったのですが、いままでのプロダクトやプロモーションを見直したうえで、さらに新しい取り組みや価値を提供していこうというのが“デジモンプロジェクト”になります。その取り組みの一環として、4月から放送開始したテレビアニメの『デジモンアドベンチャー:』を背景に、商品としても新たに“デジモンカードゲーム”の立ち上げや“SHODO”などの食玩カテゴリの展開、そして情報番組の定期配信などに挑戦しました。今年度の集大成的な位置づけにあたるのが、今回発表した“バイタルブレス”になります。 ――プロジェクトを2019年1月に立ち上げてから2年弱経つということですが、手応えはいかがですか? 原田 この1年間では、カードゲームが非常に好調です。また、プラモデルも人気です。カードゲームに関しては、1990年代後半に展開して以降、なんとか新しい形で、また楽しんでいただきたいと思っていたのですが、おかげさまで新旧のユーザーの皆様の支持をいただき始めている状況です。 ――公式総合サイトの動画もすごく充実していますよね。ただ、今年の状況を考えると、紙のトレーディングカードの展開を軌道に乗せるのはたいへんだったかと思うのですが、コロナ禍の中でも好評を博した要因は、どこにあると分析されていますか? 原田 チュートリアルアプリの配信によるルールのティーチングや、フィジカルなトレーディングカードゲームでも対戦が気軽に楽しめるアプリ“BANDAI TCG CONNECT”など、自宅にいながらもトレーディングカード(TCG)対戦をお楽しみいただける環境を提供しています。 “BANDAI TCG CONNECT”が10月30日より開始。トレーディングカードゲームがオンラインで遊べるシステム https://www.famitsu.com/news/202010/29208491.html 関戸 デジモンが好きな方やカードゲームの経験があまりない方でも楽しめるゲームシステムになっており、デジモンを進化させて戦うもよし、進化を飛ばしていきなり強力なデジモンで戦っても楽しめるゲーム性になっています。そのあたりのシステムのバランスがとてもよくて、初めてのお子さんでも大胆なプレイができるんです。簡単だけど奥深くて入りやすいカードゲームのシステムを設計できているのかなと思っています。最初に遊んでいただけたユーザーは、旧“デジモンカード”ファンが多かったと思うのですが、カードゲームファンも早い段階からプレイしてくださったと、カード事業部から聞いています。 原田 また、11月から北米でカードゲームのプレセールを始めまして、非常に好評をいただいていると聞いています。ほか、欧州、オセアニア、南米地域でも同様に展開を開始しておりまして、2021年からはワールドワイドのデジモンファンにカードゲームを楽しんでいただける環境になるかと思います。 ――『デジモン』人気は海外でも高いんですね。 関戸 高いです。これまでは北米での人気が高いことは認識していましたが、最近はアジア各国でもぐんと伸びてきていて、液晶玩具に関しては、日本に比肩する市場に育ってきています。それも、ここ2~3年の成果と言えるかもしれません。それまでは、本来海外にいるファンの方々に対して、しっかりと情報をお伝えし、セールスするという点が少し弱かったのですが、ここ数年商品数を増やして継続的に展開することで、いいサイクルができてきているようです。予想以上に『デジモン』ファンが世界中にいる、というのは、頼もしい限りです。先日、中国で映画『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』が公開されたのですが、こちらの興行成績もとてもよかったと聞いています。 原田 ちなみに、2020年1月に、『デジモン』を愛してくださっているお客様に、「しっかり『デジモン』がんばります!」という意味を含めて“WELCOME TO DIGIMON WORLD”というPVを制作・配信したのですが、海外にいらっしゃるたくさんの『デジモン』ファンの方たちに注目していただけたようです。 ――2019年にリブートプロジェクトを立ち上げて、アニメ、カードゲームと成果を挙げているということですね。 原田 はい。ビデオゲームのほうも、もともと発売は計画されていたものですが、2019年にバンダイナムコエンターテインメントから、Nintendo Switch版の『デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー』がリリースされ、ファンの方々に好評をいただいております。バンダイナムコグループとしては、カードゲーム、ゲーム、玩具の3軸で、アニメ展開を背景に、『デジモン』を盛り上げていきたいと思っています。 “バイタルブレス デジタルモンスター”は、いまの時代ならではの『デジモン』玩具の最新のカタチ ――そして、満を持しての“バイタルブレス”の投入となるわけですね。ウェアラブル端末型液晶玩具とのことですが。 関戸 新しい『デジモン』の玩具を作ろうとなると、大きくしたり、何かのハードと連動したり……と、仰々しいモノにしようと考えがちなのですが、初代『デジモン』のよかったところは、キーチェーンつきという、携帯性にすぐれているところがあったと思うんですね。であれば、昨今スマートバンドが一般的になってきているので、スマートバンド型のウェアラブル端末にしたらどうだろうと発想したんです。と、お話しするのは簡単ですが、ここにいたるまでには試行錯誤の連続で、ボツ案はたくさん出ました(笑)。 原田 関戸の部署は、初代『たまごっち』や『デジモン』を生み出した部署であり、『デジモン』の液晶玩具に限らず、つねに新しい商品を模索しています。 関戸 “バイタルブレス”は、発売まで足掛け2年以上取り組んできた集大成でもあります。世の中では、心拍数や歩数を計ったり、毎日のログを取って健康管理をしたりするアプリが流行っています。『デジモン』も、ずっと持ち歩くことによって、デジモンといっしょにいることを楽しむコンテンツだということで、とても親和性があると考えたんです。いままでの液晶玩具では、ボタンを押して実行していたエサやりやトレーニング、バトルなどを、自分の活動データに代替することで、デジモンと一心同体になっていく。“バイタルブレス”をつけたユーザーの方の自然な日常の活動が、そのまま育成・進化につながるというデバイスになっています。 ――1日これを身につけて生活するだけで、デジモンが成長してくれるのですね? 関戸 そうです。ただ、“バイタルブレス”では運動レベルというものがつねに計算されていて、単に動いていればいい結果が出るというわけでもありません。心拍数の状況なども含めて、相対的にどういう状態でいるかによって、デジモンのメンタルや状態が変わります。デジモンにもタイプがありまして、動いていたほうがうれしい状態になるデジモンもいれば、ゆったりした生活を好むデジモンもいます。ちなみに、夜になるとデジモンは眠ってしまうので、デジモンの睡眠中にプレイヤーが活発に動き回っても、反映されないです。 ――夜行性のデジモンというのは……? 関戸 いまのところいないですね。 ――デジモンの活動時間は、明確に決まっているのですか? 関戸 デジモンの種類によりけりです。寝るのが早かったり、夜更かしの子がいたり……。遅寝遅起の子もいます。 ――デジモンの活動時間も、ユーザーの運動の量や心拍数で変わるのですか? 関戸 ダイレクトに影響することはないのですが、デジモンがどのようなタイプに進化していくかは、プレイヤーの行動で決まるので、あると言えばあります。ユーザーの日々の行動は、“バイタル”というステータスに数値化されて蓄積されていくのですが、そのバイタルの値が、ウェアラブル内にいるデジモンに適した値だと、高く溜まっていきます。 いま、僕が使っている“バイタルブレス”にはバルクモンというデジモンがいるのですが、この子は割とストイックなデジモンなので、興奮したり歩いていたりすると嬉しい状況になります。逆に怠け者なデジモンに進化してしまった場合は、その子に適したように、自分もゆったりした生活をすると喜ぶんです。 ――毎日ジムに行っている人が有利になるとか、そういう感じはないということですね。 関戸 どのようなデジモンに進化するか、種類は変わりますが、それがバトルで有利になるかどうかはわからないというか、ケースバイケースです。毎日運動していれば、運動好きなデジモンのルートに入りますし、運動が抑えめだったら、まったりしたデジモンのルートに行きます。そのバランスが、“バイタルブレス”ならではのゲーム性に繋がっている感じですね。 ――まったりした生活を好むのにジムに通ったりすると、逆によくなかったりするのですか? 関戸 煙マークが出て機嫌が悪くなります(笑)。 ――無理をせずに、自分の生活にあったデジモンを育成できるようにするのがいいということですね。 関戸 そうです。それが強いです。 街の自販機や改札がバトルの相手に? ――バトルに関してはどうなのですか? 関戸 これまでの液晶玩具では、本体どうしを友だちとくっつけてバトルをおこなっていましたが、“バイタルブレス”ではそれを発展させています。友だちとの対戦バトルは、本体付属の“VSメモリーDim”を使って行うのですが、一方で、専用アプリで全国のユーザーとオンラインバトルできるようになっています。 また、街中では、電波源を発している状態のNFC搭載のスマートフォンや電子決済機などのICカードリーダーに“バイタルブレス”をかざすだけで、敵とエンカウントし、オートバトルが開始するんですよ。 原田 『デジモン』の世界観は、人間たちが生活する現実世界であるリアルワールドとデジモンたちがいるデジタルワールドのふたつが舞台となっていますが、今回は電子決済機などに“バイタルブレス”でアクセスすることで、デジタルゲートが開いて、デジタルワールドからデジモンが現れるというイメージを体現できるところも商品としての魅力だと考えています。 関戸 バトルは、タッチして敵デジモンとエンカウントすると自動的にバトルが始まり、画面を見るとデジモンがちゃんとアクションをしています。ターン性で攻撃しあうというルールだったり、属性の有利不利といったシステム、さらには勝敗の判定方式だったりは、これまでの『デジモン』を踏襲しています。 原田 その辺は、『デジモン』のこれまでの文法と同じですね。 ――タッチした場所によって出てくる敵が変わったりすることはあるのですか? 特定の飲料メーカーの自販機だったら、◯◯◯タイプの敵が出てくるといったような。 関戸 出現する敵デジモンはDim カードに収録されていて、1回“バイタルブレス”本体にカード内の情報を登録すると、そのカードに収録されているモンスターとエンカウントするようになります。 ――デジモンの種類の増やすには、Dim カードで? 関戸 そうですね。Dimカードは本体に付属しているほかに、別売りでシリーズとして発売する予定でいます。“バイタルブレス”にこの“Dim カード”を連動させることで、新たなエリアを解放し、育成できるデジモンの種類の変更・拡張ができるようになるんです。 “バイタルブレス”のリリースに合わせて、現在放映しているテレビアニメ『デジモンアドベンチャー:』とのコラボバージョン“Dim カードセット EX デジモンアドベンチャー:”が発売されます。 ちなみに、本体には “バイタルブレス”にて初登場となる新デジモン“パルスモン”が同梱されています。プレミアムバンダイにて受注中の“ver.SPECIAL”には、さらにもう一体が収録されたDim カードが追加で同梱されていますよ。 ――Dim カードは、今後順次展開される予定ですか? 関戸 はい。本体のリリース後も新しいDim カードを順次シリーズ展開する予定です。Dimカードを入れ替えることで、初代液晶玩具におけるバージョンアップ時のような体験ができるようになっています。ですので、新たに本体を購入する必要はないです。 ――Dim カードは、どれくらいのスパンで出される予定ですか? 関戸 2ヵ月に1回くらいは出したいと考えています。雪原やジャングルみたいなバリエーションを増やして、そこに生息するデジモンをDim カードごとにカテゴライズして増やしていく予定でいます。 ――今回、パルスモンが初登場とのことですが、デザインする際に気をつけたポイントなどがあれば教えてください。 関戸 “バイタルブレス”全体のデザインが、“人と繋がる”、“心拍で繋がる”ということをイメージしたパルスラインがテーマになっていまして、パルスモンもそこは意識しました。あとは、いままでに登場した知名度のあるデジモンたちと、横並びでいてもおかしくならないようなデザインを……ということは、みんなで考えましたね。 ――メインを張るデジモンの一体として、ということですね。 関戸 はい。“バイタルブレス”の新しい要素と私たちの伝えたいメッセージにプラス、デジモンとしてのよい等身やバランスは追求できたかなと思っています。 今後はレイドバトルなどの実装も ――あと、先ほど専用アプリとおっしゃっていましたが、そちらはどのようなものになるのですか? 関戸 3月の“バイタルブレス”の発売に合わせて、専用のアプリをスタートさせる予定でいます。アプリのスキャンモードを立ち上げた状態にして“バイタルブレス”と近づけることで、育てているデジモンが“バイタルブレス”本体からスマートフォンに移動するんです。“バイタルブレス”本体で育てることができるデジモンは2体なのですが、アプリには複数体保存しておくことができるんです スマートフォン上では、デジモンがこれまで毎日どういう状態を辿って成長してきたのかといった活動ログや、自分が育ての親としていままで何体のデジモンを育ててきて、何回バトルしたかといった、ユーザーとパートナーデジモンのデータが閲覧できます。あとは、『デジモン』のバトルランキングやユーザー=テイマーのランキングを確認したりとか……。Dim カードから出てきたデジモンたちを図鑑に登録していくといった遊びもどんどん解放されていきます。 「こういう育てかたをしたから、今回は最終的にこのデジモンへと進化しました」といった、レシピも見られるようにしますので、“バイタルブレス”がゲーム攻略的にもわかりやすく、遊びやすくなりますよ。 ――ちなみに、本体のカラーバリエーションは3色になっていますね。 関戸 はい。ほんの3色ではあるのですが、やはり身につけるものなので、色が固定されていて、「この色しかない」ということになるよりは、バリエーションがあったほうがいいと判断したんです。そのため、黒と白の定番色に加えて、スポーティーな印象もある蛍光イエローも用意しました。 ――価格も相当お手頃ですね。 関戸 そこは、テレビゲームのソフトの価格が、ひとつのベンチマークになっていますね。 ――少し気の早い話なのですが、今後「こんなことを予定している」みたいなことがありましたら……。 関戸 マルチプレイということでいうと、複数のユーザーと協力して敵を倒す“レイドバトル”の実装を予定しています。また、“VSメモリーDim”は個人間でのデータのやり取りもできるようになっているので、将来的にはアイテムの付与だったり、新しいミッションの追加といったことも考えています。 ――最後に、ファンに向けてのメッセージをお願いします。 関戸 携帯型液晶玩具『デジモン』の歴史は、そのときどきの最先端のテクノロジーを子どもたちに伝えようとする努力の賜物であるべきだと思っています。“バイタルブレス”も、そんな『デジモン』の歴史に連なるデバイスになったのではないかと自負しています。これまで皆さんに愛されてきたシリーズの世界観を体現しつつ、2000年代にふさわしい『デジモン』として、ユーザーの皆様に認めていただけるものに育てていきたいです。 あと、いまは“コンテンツを楽しむ”ということにおいて、世代やジェンダーの境がなくなってきているのかなと思っています。そういった意味では、“バイタルブレス”は、大人からお子さんまで幅広い層に支持していただけるようなデバイスにしたいと思っています。ぜひ遊んでいただきたいです。 原田 まだまだこれからですが、プロジェクトの成果の一部をご提案でき始めているのかなと思っています。おかげさまで、カードゲームやプラモデル、食玩などもユーザーの皆様から評価していただいていて、世界中に『デジモン』のファンがたくさんいらっしゃることを、改めて認識しました。『デジモン』ファンの皆さんにいかに楽しんでいただける商品を提供し続けるかが、これからの『デジモン』を形作っていくと思いますので、プロジェクトメンバー一同、喜んでいただけるような商品・サービスをお届けしていきますので、皆様応援をよろしくお願いします。
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