マイナンバーカードの全国民交付を実現するため政治家は自らを"さらせ"!
『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、マイナンバーカードの普及策について語る。 * * * マイナンバー制度は菅政権のデジタル化政策の鍵を握る存在だ。そのため政府は、2022年度末までのマイナンバーカードの全国民交付を目標に掲げているが、普及率はいまだ2割程度。 コロナ給付金のオンライン申請をする場合に必要なこともあって、取得者は増えているが、全国民に届けるという目標に向けて順調なペースだとは決して言えない。 11月27日に開かれた政府の会合で、マイナンバーと個人の銀行口座の紐(ひも)づけを義務化する案が見送りになったのは、義務化できるほどマイナンバーカードの必要性についての理解が社会に浸透していないからだ。 また、紐づけによって自身の資産状況が政府に監視されるという不安の声がいまだ根強いこともある。紐づけを義務化すれば、マイナンバーカードの普及率の伸びは今よりも鈍化するだろう。 そして、代わりに菅政権が示した妥協案は、「紐づけは政府が運営するマイナポータルに、ひとり一口座のみを任意で登録する」というものである。これにより、マイナンバーカード保有者は迅速にコロナ給付金を受け取ることができると政府はそのメリットを語っている。 ただ、この妥協案は、紐づけしなければお金はなかなか届かないぞと低所得者を脅す事実上の「紐づけ義務化」の施策になってしまうだろう。コロナ禍で窮乏する人ほど、給付金を少しでも早く手にしたいと口座の紐づけに応じる可能性が高いからだ。一方で、多額の脱税を行なっているような高額所得者などは決して紐づけに応じない。 政府に言いたい。こんな貧困者いじめの政策でなく、もっと骨太のマイナンバー普及策を打ち出すべきだ。そのためには、政府がマイナンバーを扱うことに対する国民の信頼を醸成することが一番重要だ。