『ザ・バットマン』続編に「M:I」最新作、ブラピ×デイミアン・チャゼル『Babylon』ほか各スタジオのラインナップを一挙紹介
一年に一度、世界中の映画館興行主が一同に介するコンベンション、シネマコン(CinemaCon)が3年ぶりにラスベガスに戻ってきた。厳密には、昨年8月に参加者を最小限に小規模なシネマコンが行われていたが、パンデミック前のような賑やかなイベントは久々とあって、各スタジオも作品の量、質ともにこの2年間の空洞を埋めるような大型作品を大きく打ち出していた。4日間、連日行われたスタジオのプレゼンテーションには、映画会社のエグゼクティブに混じり監督や出演者が多数登壇し、映画館で観る映画の完全復活を宣言していた。 【写真を見る】話題の最新作や『トップガン マーヴェリック』の最速試写など、CinemaComの様子を紹介! ■「ミッション:インポッシブル」8作目の公開決定や、デイミアン・チャゼル監督の最新作もお披露目 そのなかでも話題を集めたのは、パラマウント・ピクチャーズのプレゼンテーションの中で行われた、サンディエゴでのワールド・プレミアと、フランスのカンヌ国際映画祭でのプレミア上映を控えた『トップガン マーヴェリック』の最速試写。朝9時15分からのプレゼンテーションに多くの参加者が列をなし、南アフリカで「ミッション・インポッシブル」最新作の撮影中のためシネマコンに来場できなかったトム・クルーズが小型飛行機に乗って収録したコメント映像が流れると、会場から大歓声が起きた。もともとは2020年夏に予定されていた『トップガン マーヴェリック』は、この映画が上映されるベストタイミングまで何度も延期されてきた。さらに、トム・クルーズのライフワークでもある「ミッション:インポッシブル」の7作目のタイトルが『Mission: Impossible Dead Reckoning』と決まり、2023年7月14日に米国で公開予定。第8作目にして最後の作品とされている『ミッション:インポッシブル8』は2024年6月28日が米国での公開予定日だと発表された。 また、『ラ・ラ・ランド』(16)、『ファーストマン』(18)に続くデイミアン・チャゼル監督の最新作『Babylon』の初予告編もお披露目された。『Babylon』は、無声映画からトーキーへと移り変わった時代のハリウッドを舞台に、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、トビー・マグワイア、オリヴィア・ワイルド、そして監督のスパイク・ジョーンズやレッド・ホット・チリ・ペパーズのフリーらが出演している。予告編では、チャゼル監督のシグネチャーと言えるプールのある豪邸でのパーティシーンなどが観られた。『Babylon』は、12月25日北米公開予定。 ■ユニバーサル映画は「毎週末に文化創造のインパクトを与え続ける産業が必要」と25本を劇場公開 ユニバーサル映画のプレゼンテーションは、全米各地の映画館で働く人々と、映画に出演するタレントや監督とのカップリングで行われた。劇場公開配給部門責任者は、「ユニバーサルは今年、ほかのスタジオの平均公開本数よりも10本多い、25本の作品を劇場公開いたします」と口火を切った。「映画館で公開する作品を狭めれば、観客動員数が減るのは当然のこと。私たちには、毎週末に文化創造のインパクトを与え続ける産業が必要なのです。個人的な物語、オリジナルなストーリー、そしてそれらを大きなスクリーンから感じとることが、この試練の時を耐久することにつながります」と述べ、今年公開予定の数々の作品を紹介した。 その中の1本、『ゲット・アウト』(17)、『アス』(19)のジョーダン・ピール監督が登壇し、最新作『NOPE/ノープ』(日本公開8月26日)のプレゼンテーションが行われた。ピール監督は、「私は常に、観たこともないような映画に惹かれています。そして、これらの未知のアイデアと悪夢を同時に大きなスクリーンに持ち込むことが私の野望です」と語り、予告編が上映された。再度ダニエル・カルーヤと組み、“観たこともないアイデア”となるのは、SF+ホラーの体裁。田舎町の牧場と浮遊する未確認飛行物体、驚愕するダニエル・カルーヤの組み合わせは、観客を未知の世界に誘うことだろう。 また、同じくユニバーサル映画配給のイルミネーションの大ヒットシリーズ『ミニオンズ』の最新作、『ミニオンズフィーバー』(日本公開7月15日)からは、怪盗グルー役のスティーブ・カレルが登壇し、カナダの劇場支配人にグルーのロシア訛りのアクセントを伝授し、会場を笑いの渦に巻き込んでいた。そして、7月29日に日本でも公開になる『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の最新予告編を流し、プレゼンテーションが締めくくられた。 ■「ジョン・ウィック」『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の続編も決定! ライオンズゲートは、ロバート・デ・ニーロと共演した『About My Father』の主演を務めた、スタンダップ・コメディアンのセバスチャン・マニスカルコを司会として起用。ほかのスタジオがスタジオのエグゼクティブによるスピーチだったのに比べ、娯楽色の強いプレゼンテーションだった。 キアヌ・リーブスの新しいヒットシリーズとなった『ジョン・ウィック:チャプター4』(2023年3月24日北米公開)の特報映像が流れ、リーブスと監督のチャド・スタエルスキも登壇して抱負を語っている。「僕らのクリエイティブな絆に火をつけたのは、1998年の『マトリックス』の現場だったね」とリーブスが思い返し、そこから2人でジョン・ウィックの物語やアクションの設定を築いていったと述べる。スタエルスキ監督は、「私たちは映画というメディアを進化させ、映画的アクションを新たな高みへと導こうとしています。4作目の『ジョン・ウィック』は、私たちが愛した70年代前後の映画へのラブレターのような作品です。デヴィッド・リーン監督、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(67、ジョン・プアマン監督)、チャールズ・ブロンソン、クリント・イーストウッドなどの作品からインスパイアされて、ジョン・ウィックのシリーズをスタートさせました」と語った。また、同じく4本目となる『エクスペンダブルズ4』には、シルベスター・スタローン、ミーガン・フォックス、アンディ・ガルシア、ジェイソン・ステイサムが出演することも発表された。 ワーナー・ブラザーズ映画のプレゼンテーションでは、いくつかの映画の最新情報が明かされた。今年公開された映画の中でも群を抜くヒット作となった『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の続編製作が正式に発表になり、マット・リーヴス監督とロバート・パティンソンも続投する。マーゴット・ロビーがバービー役を、ライアン・ゴズリングがケン役を演じる『バービー』(北米公開7月21日、グレタ・ガーウィグ監督)のポスタービジュアルも公開になった。また、ティモシー・シャラメがウィリー・ウォンカを演じる『WONKA』(2023年12月23日北米公開)のフッテージや、ジェイソン・モモア主演の『アクアマン』(18)の続編『Aquaman and the Lost Kingdom(原題)』(2023年3月17日北米公開、ジェームズ・ワン監督)の予告編、『シャザム!』(19)の続編『Shazam! Fury of the Gods』(12月12日北米公開)、エズラ・ミラー主演の『The Flash』(2023年6月23日北米公開)などの最新情報も告げられた。 DC作品『Black Adamブラックアダム』(10月21日北米公開)と『DC がんばれ!スーパーペット』(8月28日公開)の2本の作品を控えるドウェイン・ジョンソンは最初ビデオメッセージで登場したが、そのまま会場に姿を表した。スピーチではキャンペーンなどで訪れた各映画館の担当者の名前を呼びながら、映画館経営者たちを労い、鼓舞していた。ワーナーのプレゼンテーションの中で最も長い時間を割いて行われたのが、7月1日に日本公開となる『エルヴィス』だった。 話題作がずらっと並んだワーナーの作品群だが、4日間のシネマコンを通じて最も大きな話題となったのが、オリヴィア・ワイルドの『ブックスマート』(19)に続く監督第2作となる『Don’t Worry Darling』(9月23日北米公開)の紹介のためにワイルド監督が登壇していた際のこと。この映画は、『インセプション』(10)、『トゥルーマン・ショー』(98)そして『マトリックス』(99)をインスピレーション源に挙げ、本格的な心理サスペンス劇を目指す。フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、クリス・パイン、ジェマ・チャン、キキ・レイン、そしてワイルド自身も出演している。この紹介の最中に、舞台前方から一通の封筒が差し出され、受けとったワイルドは「私に?不思議ね」と言いながらその場で封筒を開け、「脚本な気がするから、この場で開けてみましょう。…わかったわ、どうもありがとう」と言い、そのままプレゼンを続けた。 後日明らかになった報道によると、封筒の中身はジェイソン・サダイキスとの婚約破棄に基づき、2人の子どもの親権に関する書類だったという。さらに、このタイミングで書類が手渡されたことは、現在イギリスで撮影中のサダイキスにとっても寝耳に水だったそうだ。映画業界向けのプレゼンの最中にセキュリティを潜り抜け、一体誰がこのようなことを企てたのか、シネマコン会期中ずっと語られ続けていた。今作は重厚な物語と、オリヴィア・ワイルドと今作で知り合い交際に発展したハリー・スタイルズが出演する今年秋の期待作とされているが、ジェイソン・サダイキスのApple TV+のヒットドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』も製作はワーナー・ブラザーズなので、なにか複雑な裏事情がありそうだ。 こうして各スタジオの話題作・期待作を並べてみると、ヒット映画の続編やフランチャイズ作品が以前よりも増えているように思える。パンデミックの2年間を経て、映画館に観客を呼び戻すには、未知の作品よりも、親和性の高い作品のほうが優位に動くというマーケティングなのだろう。やっとパンデミックが落ち着いてきたいま、スタジオも観客も、未来に向けてワクワクした気分を高揚させたいという想いが強いのかもしれない。 取材・文/平井伊都子