新型コロナ専門家会議 脇田座長らが会見(全文2)実効再生産数が明確に減少
北海道の流行状況の評価
脇田:ありがとうございます。では西浦教授にデータの解説をお願いいたします。 西浦:私からは、お手元にあります資料の図を見ながら、状況分析の結果を説明させていただきます。4ページの図1をご覧ください。北海道の流行状況の評価に関してです。この図1は4つのパネルがありますけれども、左側の2つというのが流行曲線ですね。一番左上が、全感染者を発病時刻ごとにプロットしてみた流行曲線です。だいたい2月の18日から20日にかけてのころをピークにして流行曲線が描かれているのを見て取っていただけると思います。そのうち左下の図なんですけれども、全感染者のうちでリンクなしといって、感染源が不明の患者さんの数がこの左下の流行曲線になります。いずれも北海道庁が発表した公表データをベースにしているもので、実際のところでは公表されていないリンクのある方っていうのが、この中に数人いる可能性があるということもお含み置きください。 今、流行曲線を取ってみていただけて分かることは、左下の図なんですけれども、時刻とともにリンクなしの感染者数が減っているというものです。リンクのない感染者数というのは、どこで感染したかが分からない感染者数を表しています。言い換えるならば、北海道のコミュニティーにおいてどれくらい伝播が盛んに起こってきたのかということを反映している感染者数ですが、リンクのなかった感染者数が明確に減少傾向にあったように見て受け取れるということが、この図の左下から分かることです。
3月上旬から1を下回る傾向に
右側の2つのパネルをご覧ください。右側の図の黄色の棒グラフというのは、私たちは発病時刻を基に逆計算というテクニックを使って推定をした感染推定時刻です。なので、この右側の2つのパネルの左側の縦軸というのは感染者数を表します。感染というイベントは通常、直接に見て取れない、直接に見れないんですけれども、感染の時刻を推定したものがその黄色のバーになります。 黄色のバーの時々、途中に灰色のものというのが混じっているんですが、1人とか2人とか混じっているんですけど、それらは輸入感染者といって、海外で感染したことが明確なもの。黄色のバーは国内感染例です。その推定感染時刻を基に実効再生産数と、各時刻で1人当たりの感染者が生み出した2次感染者数の平均値を推定したものが青い線になります。その青い線を取り囲むように、青い影が95%信頼区間になります。 この実効再生産数が1を上回っていると、1人当たりが生み出す2次感染者数が1を超えているので、流行が拡大傾向にある。一方で1を下回っていると感染者数が減衰をしていって、おそらく流行が制御状態にあるのだろうということを判断できるんですけれども、右上の図を見ていただくと、2月の上旬の辺りは1を上回っている時期があって、その間、その後、1を上回ったり下回ったりすることを繰り返していたんですけども、最近、特に3月の上旬になってから1を下回っている傾向があるように見える。 特にその傾向を明確にするために、右下の図というのは何をしてるかというと、2月29日から、2つの期間を比較しているんですけれども、1つの期間、2月16から2月28日までの、北海道で、いわゆる緊急事態宣言を発出する前の期間と、それから緊急事態宣言の翌日の2月29日から3月の12日までという、それぞれの2つの期間で仮に実効再生産数が定数だったとした場合に、どの程度の実効再生産数の変化があったのかというのを見たものです。緊急事態宣言の発出前のときの実効再生産数の、その期間の平均値が0.9、発出後には0.7になっています。0.7の95%信頼区間の上限値が0.9ということなので、宣言を発出したあとに明確に、有意に実効再生産数が1を下回って、流行が減少傾向というのが顕著になったというふうに評価することができます。