もっと着物を身近に:レトロな美しさを纏う、豆千代モダンの魅力
気に入った着物とぴったりサイズが合う…というのは、アンティーク着物の醍醐味でもあるが、それでも渋々諦めなければいけないときもある。アンティーク着物が好きな方は経験があると思うが、アンティーク着物にはサイズの壁がある。昔の日本人の体型に合わせたものなので、基本的に小さいサイズが多い。 そんなときに注目したいのが、豆千代モダンのオリジナルだ。どのような経緯で作り始めたのだろうか。
「豆千代モダンというブランドは、私が自分のために着物を作り始めたことがきっかけでした。最初は一点物として自分用に制作していたのですが、それを見たお客様から欲しいとの声をいただき、徐々にお客様向けの着物制作へと発展していきました。 アンティークの着物を愛用する私自身、その魅力と同時に課題も感じていました。たとえば、コーディネートの難しさや、サイズが合わない、生地が傷んでいるといった不便さです。可愛らしさはあるものの、実用面での制約も少なくありませんでした。 そこで、アンティークの良さを活かしつつ、これらの課題を解決するようなオリジナル着物の制作を始めました。これが『豆千代モダン』誕生の経緯です」
『KIMONO姫』から始まった、2000年初めの着物ブーム
筆者と同世代ならば覚えている人もいると思うが、2000年初め頃、アンティーク着物がちょっとしたブームになった。ファッション好きの人からジワジワと広まったブームだ。 このブームの火付け役に、『KIMONO姫』という雑誌があった。『KIMONO姫』は、2002年に祥伝社から創刊し、現在はTAC出版で『KIMONOanne.』として刊行されている。 当時の『KIMONO姫』は、まさに着物女子が欲しい着物が詰まっていた雑誌だった。洋服の延長線で着物を着たい人にとって、バイブルのような雑誌であり、大物スタイリストのコーディネートからアンティークショップの紹介まで、心がときめく特集で誌面を飾っていた。
また、着物のコーディネートで新しい提案がされたのも、この頃からのように思う。 着物にレースを合わせることや、小物で遊び心を取り入れたコーディネートの提案は、それまで敷居が高く感じていた着物スタイルに対しての意識が確実に変わっていった。 2000年初めの着物ブームは、『着物』がもっと身近な存在に変わっていくきっかけでもあったが、当時はどのような雰囲気だったのだろうか。 「当時はSNSもなかったので、今と比べると情報の広がり方が少し違いますが、そういうなかでも、情報を得るのが早い人や、感度の高い方から着物の世界に入っていたという感じですね。 たとえば、編集者さんとかデザイナーさん、クリエイティブ系の人が目をつけて、着物を取り入れていったように感じます」 そしてもちろん豆千代さんも、そのブームを牽引していた。 豆千代モダンとともに、豆千代さんが提案するコーディネートや、人気カメラマンやスタイリストとのコラボレーションも、着物の魅力を引き出すクリエイティブに溢れるものだった。