【美点はそのまま】ルノー・クリオ(ルーテシア) Eテックへ試乗 2モーター+1.6NAのHV
F1にインスパイアされた技術
text:James Attwood(ジェームス・アトウッド) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) ルノー・クリオ(ルーテシア)にハイブリッドが登場した。ルノーによれば、Eテックと呼ばれるハイブリッドは、F1にインスパイアされた技術なのだという。極めて知的かつ複雑でありながら、存在に気づけないシステムでもある。 【写真】クリオと競合コンパクトハッチ ヤリスにフィット (128枚) ベースとなっているのは1.6Lのガソリンエンジンで、2基のモーターによってアシストされる。確かに今のF1のエンジンは、1.6Lのガソリンターボだ。V型6気筒だけれど。 もっとも、システム総合最高出力140psでは、ダニエル・リカルドは表彰台に登れなかっただろう。 2基のうち、48psの電気モーターは、ガソリンエンジンの後ろ側にあり、ATを介して前輪を動かす。エンジン側に4段、電気モーターに2段のギアがあり、どちらにもニュートラルがあるから、理論的には最大15段のギア比の組み合わせがあるという。 もう1つ、エンジンの横の小さな電気モーターが、エンジンをアシストする。こちらは20psで、スターター・ジェネレーター(ISG)としての機能を受け持つ。 これら2基のモーターは、比較的小さな1.2kWhの容量のバッテリーで稼働。電気モーターの回生ブレーキで、充電をまかなう。それぞれのモーターは、独立して制御される。 この複雑なハイブリッド・システムがルーテシアに搭載された理由は、2つある。1つ目は、SUVのキャプチャーやハッチバックのメガーヌに搭載されるハイブリッドと、基本的に同じものを利用しているということ。
ライバルはヤリスやフィットのHV
2つ目は、小さなバッテリーとすることで、ガソリンエンジン版ルーテシアから車重増を10kg程度に留められるということ。ちなみにバッテリーサイズは、キャプチャーなどとは異なる。 コンパクトカーで、効率的なハイブリッドを実現する重要な要素は、車重。簡単に克服できる課題ではない。このクラスが、完全にはハイブリッド化されていない理由の1つでもある。 ルノーのEテックの構造を理解するのは難しいけれど、運転はとてもシンプル。EVモードなら、最大64km/hまで電気モーターで走行可能。さらに大きなトルクが必要な時や、バッテリーの充電がなくなると、エンジンが自動的に始動する。 ISGは、発進から16km/hくらいまでをカバー。滑らかで静かな加速を実現している。ルノーによれば、日常的な市街地での走行の場合、80%くらいはエンジンを動かさずに走れるという。 エンジンが目を覚ましても、とてもシームレスにモーターとの協働を始める。滑らかで静かなままだ。 速度が増すほど、電気モーターとエンジンが大きなパワーを発揮。モーターの力で充分な状態になれば、再び自動的にエンジンは停止する。 エコ、ハイブリッド、スポーツのドライブモードが用意され、ルーテシアの動的性能の設定を切り替えられる。どのモードでも、ドライバーはドライブトレインの働き具合を気にする必要はない。システム任せで大丈夫だ。