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日EU経済連携協定が、ブレグジット後の英産業界を脅かす

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The Guardian

【記者:Larry Elliott and Jasper Jolly】  日産自動車(Nissan Motor)が3日、英サンダーランド(Sunderland)工場での新モデル生産計画を撤回した。これを受け専門家らは、1日に発効した日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が、3月29日に迫った英国のEU離脱(ブレグジット、Brexit)後の英産業界を脅かす存在となる可能性があると警告している。  日欧EPAは、世界最大級の自由貿易圏を誕生させた。協定には、日本からEUへ輸出される自動車の関税を撤廃する方針が盛り込まれている。このことから英国では、日本企業が英国に生産拠点を置かなくなるのではないかとの懸念が生じている。  対外貿易を専門とする英ケンブリッジ大学(Cambridge University)の経済学者メレディス・クロウリー(Meredith Crowley)氏はこう語る。「EUと日本の自由貿易協定に加え、英国とEUの関係の見通しが不透明なことから、日本企業はEUに製品を輸出し、英国は蚊帳の外に置かれる危険がある」  一方、仮にEUにとどまれば、日欧EPAによって英国は年間30億ポンド(約4260億円)の恩恵を受けると、英産業界は試算している。英製造業連盟(EEF)のチーフエコノミスト、シーマス・ネビン(Seamus Nevin)氏は「巨大な機会損失となり得る。このため製造業界は、(合意なき離脱によって混乱が生じる)クリフエッジ型のブレグジットを何としても避けようとしている」と説明する。  日欧EPAによって、対英投資の誘致が難しくなるとみる専門家もいる。日欧EPAは7年かけて自動車関税を現在の10%からゼロにするとしている。そうなれば日本で生産し、EUへ輸出することは今よりも容易になると、英アストン大学ビジネススクール(Aston Business School)のデビッド・ベイリー(David Bailey)教授(産業戦略)は指摘する。  一方、英自動車製造販売者協会(SMMT)によると、英国の昨年の日本への自動車輸出は26%増加した。合意なき離脱となれば、英産業界の中でも最も急速に成長をしている自動車産業の成長を妨げる可能性も出てくる。「ジャガー・ランドローバー(Jaguar Land Rover)などは、売れるか分からないまま、日本や韓国に輸出することになる」と、ベイリー氏は指摘する。  英国際通商省は、EU離脱後に日英貿易に混乱を生じさせないことを優先するとしているが、その後は日本に対しEUとのEPA以上の協定を求めようとするだろう。また、英国は、日本や、チリ、オーストラリア、ニュージーランドなど11か国が加盟する「包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」への参加に意欲を示している。  英ウォーリック大学ビジネススクール(Warwick Business School)のナイジェル・ドリフィールド(Nigel Driffield)教授(国際ビジネス)は、「今、英国に何があるかは問題ではない。問題は、将来英国に何が来ないかだ。日本の3大自動車メーカーである日産、ホンダ(Honda Motor)、トヨタ(Toyota Motor)は、これから12~18か月以内に、2023~24年の新モデルの生産をどこで行うかを決定する」  英国が単独で、より条件の良い2国間貿易協定を交渉できるというのは神話だと、ドリフィールド氏は言う。「EUの関税同盟にとどまることに、否定的側面がみられないのはこのためだ」【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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