遅れてきた35番のセンターバックの躍動。前橋育英高校・鈴木陽がチームにもたらすポジティブな影響の意味 【NEXT TEENS FILE.】
試合は開始2分で鹿島ユースがFKの流れから先制。前橋育英はいきなりのビハインドを負ったが、鈴木と久保遥夢のセンターバックコンビに、石井と柴野快仁のドイスボランチが丁寧にボールを動かしていく中で、チームは徐々に攻撃のリズムを掴んでいく。
「僕は技術とか身体能力はないので、コーチングもそうですし、全体を見て予測や準備をしてプレーするのが持ち味だと思います」。そう自己分析する通り、鈴木のポジショニングはいつでも絶妙。ビルドアップ時も、被カウンター時も、的確な位置取りでその時々での最適解を導き出していく。鹿島ユースのアタッカー陣にもそれぞれ異なる特徴を持つタレントが揃うも、流れの中からは決定的なチャンスを作らせない。
チームは67分に久保のヘディングで1-1の同点に追い付いたが、86分に再びFKから失点。これが決勝点となり、ファイナルスコアは1-2。優勝争いからは一歩後退する黒星を突き付けられる。ただ、「アントラーズはセットプレーが得意だと事前からわかっていたんですけど、そこからの2発で入れられてしまったので、非常に悔しいです」と唇を噛んだ鈴木のパフォーマンスは、世代最高峰のステージでも十分に通用するそれだった。
ハイレベルな環境に身を置いているからこそ、気付いたこともある。「徐々に成長しているとは思うんですけど、まだまだヘディングは向上できますし、自分は身長が小さいことを言い訳にしない選手になりたいので、競り合いでも勝てるようにトレーニングしたいと思いますし、あとは1対1でも相手のエースを封じ込められるようにしていきたいです」
その置かれた立場が以前とは変わったとしても、自分のやるべきことはこれまでと何も変わらない。できることを1つでも増やすべく、日々のトレーニングに真摯に取り組んでいく。その積み重ねが今の自分を築き上げていることも、鈴木ははっきりとわかっている。
シーズンも最終盤。残された試合も、時間も、もう限られている。ここからの戦いに向けて、改めて口にした決意が頼もしい。「もう引退まで1か月半と、本当に時間も少なくなってきているので、残りの試合は全部勝てるように、これからまたトレーニングしていきたいです。今日のアントラーズには際の部分で上回られたので、この負けを良い負けにして、選手権で優勝できるように繋げていきたいです」
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